高取町開催のイベント「町家のかかし巡り」をご案内します。
近鉄壺阪山駅前から土佐街道筋にかけて案山子がお出迎えする秋の恒例行事です。
まるで生身の人間かと見紛うほどの案山子に思わず頬がほころびます。2015年度の今年で第7回目を迎えたかかし巡りですが、これからも続いていってほしいイベントの一つです。
桃太郎の誕生シーンも案山子になって登場です。
パカッと割れた桃の中から元気な桃太郎が顔を覗かせます。鬼たちにも躍動感があふれています。
スタンプラリーで巡る土佐街道
町家のかかし巡りはスタンプラリー形式で楽しむ仕掛けになっています。
イベントごとには欠かせないスタンプラリーですが、町家のかかし巡りにおいても上手くはまっていたのではないかなと思います。
様々な案山子が楽しめるとは言っても、やはり途中で飽きてしまうのが人の性というものではないでしょうか。スタンプラリーがあると、あともう一軒あともう二軒と目的意識が芽生えます。その甲斐あって、全ての案山子展示を見学し終える人も多いものと思われます。
開催期間は10月1日から31日までの一箇月間でした。
かかし巡りの開催時間は午前10時から午後4時までと、遅い時間帯には店じまいしてしまいますので注意が必要ですね。
ここは古い町並みの残る高取城の城下町。歴史風情あふれる町並みをひとつのテーマパークに見立て、案山子を主役にしたイベントが繰り広げられています。なんと、町家の案山子約200体がお出迎えしてくれるそうです。
案山子の語源は鹿驚(かがし)にあると言います。
農民たちが一生懸命に耕した田畑を荒らす猪や鹿。
農作物の被害を防ぐために、それらの嫌う獣の肉を焼いて串刺しにしたものを「かがし」と言ったのです。
臭いをかがすという意味合いを含んだ言葉とされます。今では鳥獣避けネットなどに取って代わられ、その存在感が薄れている案山子ですが、こうしたイベントを通して古き良き日本を感じるのはいいものです。
壺阪山駅近くのポイントにスタンプラリー「1」の案内札が立っていました。
土佐街道筋の合計6カ所に置いてあるスタンプを押して景品をゲットする仕組みです。押印は自分で行います。行く先々でスタンプラリーの押印場所であることを示す案内札がありますので見落とさないようにしましょう。
バーベキューに興じる案山子ですね。
ここは牧歌的な雰囲気の漂う案山子エリアです。この道を東へ向かうと、天文図が話題のキトラ古墳へアクセスします。キトラ古墳への距離は大してありませんので、案山子巡りを楽しんだ後はキトラ古墳へ足を伸ばしてみてもいいのではないでしょうか。
案山子に吹き出しが付いています。
「ほら、食ってみろ。た~くさん食べて大きくなれよ!」 牛の案山子に話しかける様子が演出されています。
高取町の案内地図の周りにも案山子の姿が見られました。
これから高取町観光に出掛ける家族の姿なのでしょうか。
土佐街道を少し進んで行くと、左手にスタンプラリー「2」の会場がありました。
腕の構えからすると、エアーギターでも弾いているのでしょうか。指に目を移せば、弦をはじいている様子が伺えます。
中に入ってみると、「楽しい音楽会」が催されていました。
先生の指揮に従って、児童たちが楽器を演奏しています。太鼓にタンバリンですね、比較的演奏のしやすい楽器から推察するに、小学校低学年ぐらいの年齢なのでしょうか。
こちらは演奏会を聴く児童たち。
案山子とはいえ、小さい子供は可愛らしいものです。
おや?園児たちと書かれていますね。
どうやら年齢層はもっと低かったようです(笑) こちらの案山子家では毎年様々なテーマが設けられているようです。今年は生活発表会(楽しい音楽会)ですが、過去には結納納めや結婚式などの様子も再現されています。すごい、ウェディングケーキも用意されていますね。
土佐恵美須神社の七五三風景
さらに土佐街道を進んで行くと、左手に土佐恵美須神社が見えて参ります。
薬祖大神とも呼ばれ、健康祈願のお社として知られます。
鳥居の手前右側に「土佐恵美須神社」、左側には「薬祖大神」の社号標が見られます。
恵比須神社と言えば商売繁盛の神様を想像するのですが、さすがに薬の町・高取町だけあって少し事情が違うようです。そもそも今年の案山子巡りのテーマは「薬狩り」に設定されています。
古語辞典によれば、薬狩り(くすりがり)とは陰暦5月5日に山野に出て薬草を摘み、また鹿の袋角を取って薬用とした行事のことを言います。「競ひ狩り」「百草摘み」とも呼ばれる夏の行事だったようです。競ひ狩り(きそいがり)は「着襲ひ狩り(きそいがり)」とも書き、衣服の上に重ね着してする狩猟のことを意味します。美装して行われたともされ、薬草を競争して採取したり、鹿の若角を取ったりしたのではないかと云われます。高取町羽内の「波多甕井神社」周辺が薬狩りの故地とされます。
七五三の出張撮影風景でしょうか。
馬道のように貫かれた割拝殿の中へ入って行くと、左手に幸せそうな家族の案山子が展示されていました。出張カメラマンがシャッターを切る瞬間を切り取ったもののようです。
小さな子供が5人も揃っています。
子供たちが手にしているのは千歳飴なのかもしれません。これぞ、神社ならではの光景ですね。
本殿に向かって祈りを捧げる神主さんの姿も見られました。
とても本格的な案山子ディスプレイに思わず笑みがこぼれます。
土佐恵美須神社の本殿。
土佐街道に「土佐町の由来」と題する案内板があります。そこにはこう書かれています。
六世紀の始め頃、大和朝廷の都造りの労役で古里土佐国を離れこの地に召し出されたものの、任務を終え帰郷するときには朝廷の援助なく帰郷がかなわず、この地に住み着いたところから土佐と名付けられたと思われる。故郷を離れて生きていく生活を余儀なくされた人達のたった一つの自由な意思は古里の名を今の場所につけることであった。
なるほど、そのようないきさつがあったのですね。故郷は誰の心にも寄り添い続けるものです。
まだ真新しい感のある土佐恵美須神社の拝殿。
軒下にランプのようなものが吊下がっています。夜間には点灯されるのではないでしょうか。
キリッとしたお顔の神主さん。
案山子の見所の一つは、やはりその表情ですよね。祈りの場にふさわしい引き締まったお顔です。
大体この辺りが案山子巡りの中間地点なのでしょうか。
左へ取れば壺阪山駅まで、右へ取れば高取児童公園まで案山子の展示が続きます。
ちょっと土佐街道から外れて右斜め方向の道を辿ると、いかにもリアルな草刈り中の伯母様がいらっしゃいました。その腰の屈め具合といい、思わず声を掛けてしまいそうなぐらいに生身の人間を感じさせます。
高取町かかし村のバス停前で手を挙げる案山子。
私はここまで進んで引き返しましたが、このままこの道を進んで行くと、ビールのアルミ缶で作られた高取城天守閣の巨大オブジェに出会えるようです。土佐街道入り口のお花畑にあるようですので、見学希望の方は是非訪れてみて下さい。
バス停の案山子にも吹き出しがありました。
「もうすぐ来るから待ってましょ」。どうやら隣りに居る子供に話しかけているみたいです。
高取イラストマップ。
「健幸のまち」と”康”の字をもじっています。
こちらは桃太郎の案山子ですね。
町家のかかし巡りは主に3つのカテゴリーに分かれています。メイン会場の街の駅城跡イベント会場では、薬狩りをテーマにした案山子が展示されています。さらにテーマ館では三太郎、一寸法師、幼稚園の生活発表会などが展示されています。そして最後の三つ目のカテゴリーとして土佐街道沿いにある町家や商店が挙げられます。日常の生活空間の中にも案山子が入り込み、町全体でイベントが盛り上げられます。
空飛ぶピーターパン!
国内外の人気ストーリーが案山子を通して再現されています。
日本百名城写真展の雛壇
高取町といえば、案山子巡りと共に町家の雛めぐりイベントでも知られます。
春3月の一箇月間に渡って催されるイベントなのですが、そのモチーフは案山子からひな祭りに取って代わります。
土佐恵比須神社からすぐ上手に、イベントのメイン会場でもある街の駅キセキがあります。旧JAの建物が利用されているようなのですが、城下町らしく「日本百名城写真展」と題する展示会が行われていました。
入館時間は午前10時から午後4時までで、町家のかかし巡りと同じ時間帯になっています。
入口付近にもたくさんの案山子が展示されています。
時代劇でよく目にする駕籠です。
身分の高い人を乗せ、エッサホイサと担いで行ったのでしょうね。
百名城の写真パネルと共に、雛壇も飾られていました。
割とシンプルな三段びなです。女の子の成長を願ったひな祭りですが、昨今では自宅で飾る人も少なくなっているのではないでしょうか。案山子も徐々に廃れ逝く運命なのかもしれませんが、お雛さんの文化も薄れゆく気配が感じられます。
やっぱり古き良き伝統は残していきたいですよね。
高取町では人が集まるイベントを通して、昔の良き日本への回帰を呼び掛けます。そうだ、そんな時代があったんだよね。訪れた人の中からそんな声が聞こえれば、催し物の意味もあるというものではないでしょうか。
メイン会場に展示されていた薬狩りの様子。
7世紀初めの高取で、推古天皇が薬狩りを行ったシーンが演出されています。
高取町のかかし巡りイベントへのアクセスは近鉄吉野線壺阪山駅が便利です。駅を降り立つと、すぐ目の前にかかし巡りのマップが配置されています。案山子が展示されている土佐街道へも駅から歩いてすぐです。
<土佐街道の観光案内>