天岩戸神社には七本竹(ななほんだけ)の不思議が伝わります。
拝殿の後方には見事な竹林が広がり、七本竹と呼ばれる霊妙な竹が植わっています。毎年新たな竹が七本育つ代わりに、別の七本が枯れるというサイクルを繰り返します。
天岩戸神話で大活躍したアメノウズメが手にしていた笹の葉・・・その笹が七本竹のお話のルーツになっているようです。
天岩戸神社の竹林。
天照大神が隠れた岩穴を拝します。竹藪の中には今も四個の巨石が鎮座していると言います。本殿は無く、より原始的な信仰をうかがわせます。
橿原の昔話『天の岩戸と七本竹』
天岩戸神社の鳥居をくぐって境内に入ります。
拝殿の前に進み出て手を合わせると、建物内に絵画が展示されていました。
天岩戸神話の様子が描かれた絵で、目で追いながら古事記の世界に浸ります。今までにも何度か天岩戸神社を訪れましたが、絵が展示されていたのは初めてです。
天岩戸神社の拝殿。
鄙びた雰囲気に包まれます。石燈籠が一対並んでいるだけで、狛犬の姿は見当たりませんでした。
かしはらのむかしばなし 『天の岩戸と七本竹』。
紹介文と共に、天岩戸神話の場面が五つ掲げられていました。絵で見る神話は分かりやすくていいですね。
橿原ライオンズクラブは2014年、お陰様で50周年を迎えましたが、その記念事業としてこの地で幼少期を過ごす方々に向けて、ふるさとを愛する心が育まれることを願い、むかしばなし絵本を発行し、地元の図書施設、保育園、幼稚園等に寄贈いたしました。
その一冊が「天の岩戸と七本竹」でしたが、発刊後にそれを読んだ「天の岩戸」の所在地である南浦町の自治会から、絵本に描かれた絵の一部を、是非神社に奉納してほしいと強い要望を受けました。
神話にも語られたこの「天の岩戸」や隣接する「天の香具山」等々、さらには少し足を延ばすと藤原京や明日香方面と、この地は日本の歴史に多く出会える地域です。これをご覧頂き、歴史ロマンを少しでも感じて頂けたなら幸いです。
故郷を愛する心を育む、これはとても大切なことです。
画一化された世の中にあっても、百人百様の故郷に思いをはせる機会を持ちたいものですね。天岩戸神社からすぐ近くには香具山登山口があります。天から降ってきたと伝わる香具山は、大和三山の中でも別格です。その香具山の南麓に位置するのが天岩戸神社なのです。
天岩戸神話の奉納絵馬。
タヂカラオによって引っ張り出されたアマテラスですが、神々しい光を放っていますね。平成18年に奉納された絵馬のようですが、奉納者のお名前が西井多規子様と記されています。天岩戸神話のすぐ近くには「飛鳥の蘇」で知られる西井牧場さんがあります。うん?なぜか ”西井つながり” で連想してしまいました(笑)
天岩戸神社の社号標。
御祭神はアマテラスですが、創祀年代は不詳です。
式内社・坂門神社の論社とされ、香具山へと続く入口付近に鎮座していることからも、坂門神社という神社名に納得します。梅雨の時期には、この辺りに紫陽花が開花します。今回は真冬の参拝だったためか、鳥居周辺も少々殺風景ですね。
貫(ぬき)や楔(くさび)の上にも小石が置かれています。
鳥居目がけて放り投げ、上手に乗っかれば願い事が叶うと言いますが・・・単なる迷信のような気もします。強風が吹き付けたりしたら、やっぱり危ないですよね。くさびの上など、ちょっと斜めに角度が付いています(笑)
鳥居を入って左手に進むと、突き当りが拝殿です。
石段手前に手水処がありました。
注連縄と紙垂が掛けられています。
普段はここで手を合わせて終わりなのですが、拝殿の中、さらには後方へ回り込んで竹林の手前まで足を運んでみました。四個の巨石とやらは残念ながら発見出来なかったのですが、竹藪のどの辺りにあるのか気になります。
天岩戸神社の案内が拝所前に掲げられていました。
天香具山南麓、南浦集落のほぼ中心に南面して鎮座し、天照大神を祀る。「古事記」「日本書紀」の神話にみられる天照大神の岩戸隠れされた所と称し、今もなお巨石4個があって、大神の幽居した所と云える岩穴を御神体とし神殿はなく、拝所のみという古代人の原始的な祭祀形態を残している。
玉垣内には真竹が自生するが、これを往古より七本竹と称し、毎年七本ずつ生え変わるつ伝えられている。
竹林を背にします。
真っ直ぐに伸びる竹には爽やかなイメージがあります。
岩戸隠れしたアマテラスを誘い出すために、神憑り状態で踊ったアメノウズメ。そのアメノウズメが手にしていた笹の葉が七本竹の由来です。常に生え変わり、世の中が真っ暗闇にならないように見守り続けます。
拝所の裏側に二重のバッテン印!
これは結界を示す意匠ですね。橿原神宮の本殿特別参拝でも、同じようなデザインを目にしたことがあります。立入りが制限される天皇陵などでもよく目にします。・・・ということは、この背後をあまりウロウロしてはいけないということではないでしょうか。慌てて失礼をお詫びし、拝殿の中へと入ります。
ウワミズザクラの木を取って来ると、その木の皮で骨を焼いて占いをしました。
そして、天の香具山から榊をほり出してくると、大きな鏡や大きな勾玉などの宝物で飾りました。
拝殿内は土足厳禁です。
靴を脱いで上がらせて頂き、天岩戸神話のストーリーを目で追います。
天岩戸神社から反対側の香具山北麓に天香山神社があり、境内には波々架の木が植えられています。占いに使われる木で、この絵の解説文とも重なります。
力持ちのタヂカラオ。
やはり天照大神を抜きにしては、世の中は始まりません。
アメノウズメの足元には、伏せた桶が描かれていますね。
桶を踏み鳴らしながら踊ったと伝えられますが、まさにその記述通りの描写です。それにしても神々しい!放射状に光を放つ様は、仏像が背にする光背を思わせます。
神秘的な七本竹の逸話を残す天岩戸神社。古事記に興味を持ったなら、是非とも訪れておきたい神社の一つです。
<天岩戸神社の参拝案内>
- 住所 :奈良県橿原市南浦町772
- アクセス:橿原市コミュニティバス南浦町下車、徒歩5分 近鉄耳成駅下車、徒歩25分
- 御祭神 :天照大神