古語辞典で「蛇」を引くと、「へみ」と出てきます。
そう、上代では「へび」のことを「へみ」と言ったのです。語感の違いに一瞬戸惑いますが、そもそも蛇・ヘビにはどんな意味が込められているのでしょうか。
安倍文殊院のジャンボ干支絵馬。
巳年を祝う巨大花絵馬です。二匹の蛇が絡み合い、平仮名の「み」を表現していますね。大神神社の蛇神は「巳(み)さん」と親しまれています。どうやら「巳」は胎児を表す象形文字のようです。
脱皮して再生するパワーの源!復活を期す巳年
お母さんのお腹の中でくるっと丸まる胎児。
始まりのパワーを内包する胎児の形。包み込むチカラには霊性が宿ります。神社のお守りの勾玉も胎児の形をしていますよね。内側に丸まる姿に、古来人々はスピリチュアルな何かを感じたのかもしれません。豆や巻貝などがパワーフードと呼ばれるのも、同じ意味合いからでしょう。
平城宮いざない館の玄武。
北の方角を守護する四神・玄武(げんぶ)が展示されていました。亀と蛇が絡み合う玄武ですが、どちらも神格化されることの多い動物です。
「へみ、へみ」と言われた蛇ですが、平安時代には「くちなは(朽縄)」とも呼ばれています。ちょうど蛇の姿が、朽ちた縄を連想させることに因みます。蛇苺のことを「くちなわ苺」とも言いますよね。
大神神社の巳年大絵馬。
脱皮する「変身(へんみ)」が転訛し、「へみ」になったとする説があります。
冬眠から目覚め、地上に這い出す姿を表すという「巳」の字。物事の始まりであり、起こりを意味します。十二支の六番目に当たる巳年は、確かに再生のエネルギーを秘めているのかもしれません。
人の人生も60歳の還暦が折り返し地点だと言います。本来人は120歳まで生きられるのでしょうか。もう一度赤子に戻り、再生していく還暦。繰り返される時の流れの中で、巳年がターニングポイントに当たるのは間違いなさそうです。
大神神社の手水舎。
祭祀の「祀」という漢字にも「巳」の字が使われています。古来より自然崇拝の対象として崇められてきた蛇。瞼を持たず、まばたきをしないその澄んだ目に言い知れぬチカラを感じたのでしょう。
豊穣祈願の蛇巻に見られるように、ヘビは豊かさのシンボルでもあります。
大神神社の卯の蟇股。
なでうさぎが人気の大神神社。「卯(う)」も体を丸めていますよね。内にパワーを宿すという点では、巳も卯も同じような気がします。そもそも「う」という平仮名の形状も、何かを包み込むようなイメージにつながります。
脱皮して生まれ変わる。
巳の神格にあやかり、2025年度(令和7年)のスタートを切りたいですね!