烏梅(うばい)を生産するために作られた月ヶ瀬梅林。
名勝指定の奈良県立自然公園『月ヶ瀬梅渓』。月ヶ瀬湖岸から山腹にかけて約1万本の梅花が咲く梅の名所へ行って来ました。自然と歴史を満喫!少し肌寒い日ではありましたが、“梅と茶の郷”をレポート致します。
雨に煙る月ヶ瀬梅林。
訪れたのは3月初旬です。今年は梅の開花が遅く、ちらほらと咲く探梅を楽しんで参りました。
烏梅の歴史!一目八景と帆浦梅林
月ヶ瀬梅林を語る上で烏梅は外せません。
烏梅とは約1,300年前に遣隋使によって奈良に伝来した梅のことで、当初は薬として使われていました。月ヶ瀬には約700年前、紅花染めの媒染剤として伝わったようです。
水に2日ほど浸した烏梅。
見事に色が出ていますね!かつては月ヶ瀬に約400軒もの烏梅製造所がありましたが、現在は『梅古庵』さんのみとなりました。
購入した烏梅。
黒い梅ですね。表面にシワが寄り、一見すると梅には見えません。墨も使われているようです。
梅古庵の烏梅。
その昔、染色職人たちはこの烏梅を利用して、生地や糸を鮮やかな紅色に染めたと言います。江戸時代から明治にかけては、口紅の原料にもなったようです。
梅古庵さんの店頭に糊こぼしがディスプレイされていました。女将さんにお伺いすると、二月堂のお水取りで使われる糊こぼしの“紅”も、この烏梅で染色されているとのこと・・・意外なところで烏梅が活躍しているんですね。
帆浦梅林の紅梅。
のんびりとウォーキングコースを歩きながら、月ヶ瀬茶も購入しました。店主に一つ大切なことを教えて頂きました。梅干しの材料になる梅は、白梅から成るようです。そう、紅梅からは成らないのです。今までそんなことも知らずに梅干を食べていた自分を恥じます(笑)
月ヶ瀬茶(大和茶)のひげ茶。
いい香りがします。
かおり屋さんのひげ茶。
今回私は名阪国道の五月橋インターで降り、月ヶ瀬尾山にある行政センターの駐車場を利用しました。そこからJAの前を通って、名勝月ヶ瀬梅林の石柱(入口を示す石碑)に至ります。急な坂道を登り、巨大な梅干の樽を見ながら一目八景へと入って行きました。
う~ん、残念ながら深い霧の中です。
下界に見えているのは名張川でしょうか。
少し晴れてきました。
おそらく満開のタイミングであれば、ここから綺麗な梅林が満喫できるのでしょう。
しわくちゃ(^O^)
烏梅と紅花で染め上げた赤は、魔除けの赤でもありました。
十二単に使われる深紅色は『韓紅』と呼ばれ、高貴な女性にのみ許される禁色だったようです。
これは蝋梅ですね。
鼻を近づけると、それと分かる芳香です。
樹齢200年の城州白(じょうしゅうはく)。
大粒で肉厚な梅干しになるという品種です。
京都府城陽市青谷地区で栽培されている梅のようですが、ここ月ヶ瀬梅林でも見ることができました。“烏梅作りの最盛期が偲ばれる古木”と案内されています。
行政センターの駐車場。
駐車料金は700円でした。
古木の城州白。
梅の木は桜と違って、くねくねと左右にうねりますよね。
店主に烏梅の説明を受けました。
烏梅を使ったコーラも販売されています。この後、店内で温かい梅の甘酒を頂きました。
梅の枝。
よく見ると、先っぽの方が緑色をしています。この新しい枝に、美味しい梅の実が成るようです。
展望台の手前にマンサクが咲いていました。
早春に“まず咲く”からマンサクと名付けられています。数年前に明日香村の高松塚古墳エリアでも見たことを思い出します。
月ヶ瀬梅林のウォーキングコースは一目八景~帆浦梅林~梅林公園~梅の里ふれあい館~天神神社~天神梅林と続きます。『梅の里ふれあい館』の前に辿り着くと、八代亜紀の歌声が聞こえてきました。どうやら月ヶ瀬のご当地ソングを歌われていたようです。
月ヶ瀬梅林と同じ奈良市内には、片岡梅林や追分梅林などもあります。
梅の見頃は難しいですね。
その年によって変わりますので、随時月ヶ瀬観光協会に問い合わせてみることをおすすめします。