象山の風景画を万葉文化館で鑑賞

奈良県立万葉文化館で開催中のイベント。

万葉文化館の原点に立ち返った万葉日本画を展示する企画展。その最後を飾る「すべて見せます万葉日本画~風景~」に行って参りました。第三期となる今回のイベントでは、風景を主題にした作品が展示されています。

象山の風景画

『鳥の声』と題する川崎春彦さんの作品。

万葉文化館のオープン15周年を記念して、館内のミュージアムショップではオリジナルグッズの10%割引サービスが行われています。全ての絵画を鑑賞した後、その流れに乗って『鳥の声』のクリアファイルを購入致しました。

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日本画展示室の万葉日本画

すべて見せます万葉日本画~風景~の絵画は、全て日本画展示室において鑑賞することになります。

万葉文化館には万葉歌をモチーフにした日本画が154点も収蔵されています。会場となる日本画展示室にはデジタルギャラリーも完備され、より詳細に万葉日本画の世界を楽しむシステムが整っています。

奈良県立万葉文化館

奈良県吉野町宮滝の南西に聳える象山(きさやま)

今も吉野町喜佐谷に鎮座する桜木神社には、山部赤人が象山を詠った万葉歌碑が残されています。

山部赤人の万葉歌

クリアファイルの裏側に、その万葉歌が記されていました。

み吉野の 象山(きさやま)の際(ま)の 木末(こぬれ)には

ここだもさわく 鳥の声かも

(山部赤人 巻六~九二四)

歌の意味はこうです。

み吉野の象山の辺りの梢には、多くさえずり合う鳥の声が響くよ。

山部赤人が天皇の吉野行幸時に詠んだ歌とされますが、美しい吉野の自然を讃えた万葉歌として伝わります。

象山(きさやま)が象の形に見えたのでしょうか。少々デフォルメされた絵画ではありますが、それがまた見る者の心を奪います。気鋭の日本画家の想像力が、万葉の時代を今に蘇らせています。実に見事な表現力ですよね。

そもそも象形文字というものも、巨大な象に端を発しているのではないか。そんな風にも思えてきます。古代人たちが見た巨大な象は、間違いなく印象に残るものであり、人とは違う生物の象徴であったのかもしれません。

すべて見せます万葉日本画~風景~

万葉庭園を背景にイベントちらしを撮影。

この絵も実に印象的ですが、『大和国原(やまとくにはら)』と題する絹谷幸二さんの作品です。

大和には群山(むらやま)あれど~で始まる舒明天皇の万葉歌を元に制作された絵画です。

天の香具山の頂上で国見をすれば、得も言われぬ美しい日本の風景が広がっていたという歌ですね。実際に『大和国原』の絵を見てみると、山々の合間から炊煙が立ち込めているのが確認できます。人々の日常生活が垣間見える、平和で美しい日本を象徴する名作ではないでしょうか。

万葉文化館のフロアガイド

玄関口のエントランスホールにフロアガイドがありました。

イベントの行われている日本画展示室の場所ですが、ここから真っ直ぐ行った所にあるようです。館内のカフェレストランも案内されていますね。水出し珈琲がとても美味しい喫茶スペースです。絵画鑑賞の後に一服されてみてはいかがでしょうか。

高山辰雄の『はずの音』

こちらは『弭(はず)の音』と題する絵画ですね。

弭(はず)とはまた難しい漢字だなと思ったのですが、要するに弓矢の音のことを指しているようです。天皇愛用の梓の弓の、中弭に響く音が聞こえて来る・・・宇智の広々とした野で行われる狩猟の様子が克明に描かれています。

狩猟シーン

弓矢を手にした人たちが馬に乗って駆け回っています。

広いキャンバスの中に、ごく小さく描かれたダイナミックな狩猟図です。

中野弘彦の『吉野繚乱~時雨』

中野弘彦さん作の『吉野繚乱-時雨』。

天皇が高々と治める吉野の宮。そこには重なり合った青山と、清らかな川の流れがある・・・悠久の時の流れを感じさせる吉野の自然を詠い上げています。この絵の題材になっている万葉歌も山部赤人によるものです。

すべて見せます万葉日本画~風景~の案内チラシ

すべて見せます万葉日本画~風景~のリーフレット裏側。

左上から片岡球子の『富士』、中路融人の『比良連峰』、中野弘彦の『吉野繚乱-時雨』、烏頭尾精の『明日香風』、後藤純男の『新雪大和』が紹介されています。

烏頭尾精の『明日香風』

烏頭尾精(うとおせい)さん作の『明日香風(あすかかぜ)』。

飛鳥寺を見下ろす甘樫丘の中腹に、この絵のモチーフになった万葉歌碑がありますよね。

采女の 袖吹きかへす 明日香風 都を遠み いたづらに吹く

(志貴皇子 巻1-51)

都を去る時の、言い知れぬ寂寥感が伝わって参ります。

ミュージアムショップでクリアファイルを購入

博物館や美術館で展示品を楽しんだ後、ミュージアムショップで記念品を購入するのも楽しみの一つです。

写真撮影が許可されていない美術品や絵画を、いかに記憶の中に留めておくのか。そう考えた時に、オリジナルグッズの購入は手っ取り早い方法となります。

パンカフェ『Sizin』

万葉文化館の正門を入って、エントランスに辿り着く手前にカフェレストランSizinの案内看板がありました。

このアプローチ道とも言うべき場所には、いつもイベントの告知やミュージアムショップの案内が出ています。

ミュージアムショップの看板

「奈良のいいもの」キャッチフレーズと共に、鹿を模したクリップのようなものが描かれています。

何度か見たことがありますが、実際に商品化されている鹿クリップスですね。

万葉文化館のミュージアムショップ

万葉文化館のミュージアムショップ。

さらに奥の方には万葉図書・情報室などもあり、万葉集に関する情報提供が常時行われています。

ミュージアムショップの15周年オリジナルグッズ

オリジナルグッズの数々。

ふすま地ブックカバー木軸ボールペン、万葉日本画マグネット、万葉日本画一筆箋などがディスプレイされています。開館15周年を記念して、オリジナルグッズ全品が1割引にて販売されています。実はこの商品ディスプレイなのですが、ミュージアムショップの中ではなく、日本画展示室の横のホワイエというスペースで見かけました。きちんと導線が張られているようですね。

ふすま地ブックカバーには、奈良蚊帳の荒目織物の技術が生かされているそうです。その丈夫でしなやかな生地は、使い込むほどに手によく馴染みます。次回訪れた際には、是非購入してみようと思いました。

象山クリアファイルとうめもどき

万葉庭園のうめもどきにクリアファイルをかざします。

山が動いた!一瞬そんな錯覚にも陥ります(笑) 雄大な山の風景が、そっくりそのまま象の姿に重なります。

象山クリアファイルと万葉文化館駐車場

万葉文化館の駐車場を背景にパチリ。

このクリアファイルのサイズはB5版です。あちこちの神社仏閣、ミュージアム等でクリアファイルを購入して参りましたが、その全てがA4サイズです。B5サイズは今回が初めてですが、これはこれでこぢんまりしていてイイですよね。

木の梢にはフクロウ、キツツキ、孔雀・・・それに鶏まで描かれています。樹上に鶏とは、少し現実離れした印象もぬぐえません(笑) とは言え、かろうじて一番下の枝に止まっているのはご愛嬌でしょうか。まぁ、石上神宮の鶏が樹上で休憩していることを思えば、単なる絵空事ではないのかもしれません。

象山クリアファイルと万葉文化館

象山(きさやま)、これは一度この目で見てみたい山ですね。

奈良県人でありながら、この絵のモチーフになっている象山を見たことがありません。あるいは見たことはあっても、そうと意識していなかっただけなのかもしれませんが・・・ミュージアムは実に様々な気付きを与えてくれますね。

展望ロビーで鑑賞する推古女帝と善信尼の人生

前回、万葉文化館を訪れた時はホワイエでビデオ上映が行われていました。

今回もホワイエなのかなと思ったのですが、日本画展示室をはさんで反対側の展望ロビーにて上映中でした。

展望ロビーのだ太鼓

展望ロビーに展示される春日若宮おん祭のだ太鼓。

奈良の一年を締めくくる、冬の風物詩にもなっている春日若宮おん祭。そのお旅所に置かれているだ太鼓が万葉文化館の展望ロビーにおでましです。時代行列のお渡り式にばかり注目がいきがちですが、若宮様がお遷りになられているお旅所も見所満載ですので、今年の12月はこのだ太鼓をお旅所にて拝見することに致しましょう。

展望ロビーのビデオ上映

展望ロビーの片隅にビデオ鑑賞の場所が設けられていました。

ゆったりとしたソファに8人が座れるようになっています。

飛鳥女史紀行

『飛鳥女史紀行』と題するパンフレット。

日本の黎明期を支えた女性たちの物語が綴られます。テレビ画面に映っているのは推古天皇を演じる女性の姿です。仏教を中心とする国造りを進めた推古天皇。聖徳太子や蘇我馬子との強い絆は日本史の教科書でも習った覚えがあります。

ところで、今回のビデオ鑑賞で印象に残るワンシーンがありました。

蘇我馬子が葛城の地を欲した時に、推古天皇がはっきりと断った場面です。人は皆平等であり、いくら馬子といえどもその願いを叶えるわけにはいかない・・・そんな思いが伝わって参りました。

展望ロビーのビデオ上映

ほんの20分弱の上映時間でした。

繰り返し上映が続いていますので、途中から観た場合は、またその場面まで引き伸ばして観ればOKですね。

展望ロビーの紫陽花

展望ロビーの窓の外には紫陽花が咲いていました。

その向こうに見えるのは、飛鳥坐神社の杜です。万葉文化館から目と鼻の先に、子孫繁栄にご利益のある飛鳥坐神社が鎮座しています。

推古女帝・善信尼編

日本国創成のとき~飛鳥を翔けた女性たち~

推古女帝・善信尼(ぜんしんに)編

この映像は推古天皇の生涯を通して飛鳥の魅力や特色を感じていただけることを重視し歴史的事実を踏まえながらストーリー性の高い「物語り」として構成されたものです。

推古女帝と出会う旅

推古女帝と出会う旅。

大和八木の札の辻の写真が掲載されていました。

ビデオでも流れていましたが、横大路は推古天皇の時代に整備されたようです。

日本書紀によれば、推古天皇の推古21年(613年)の11月の条に、「難波より京(みやこ)に至る大道(おおじ)を置く」とあります。

現在の大阪・難波津は、当時の朝鮮半島や大陸との玄関口でした。その難波津と都のあった大和飛鳥を結ぶ道路が、朝廷の主導で造られたのです。日本の歴史にその名を刻む官道こそが、今も八木の札の辻を通る横大路というわけですね。

明日香村の向原寺

向原寺山門と推古天皇豊浦宮跡

向原寺(豊浦寺跡)にお参りした時に、推古天皇のお宮跡を見学したことがあります。その時の記憶が蘇る写真を見て、これはきちんとこのビデオを観ておかなければと思いました。

善信尼と出会う旅

清らか癒し系女史として、善信尼と出会う旅が案内されています。

尼さんは英語で nun(修道女) と表現するようです。

我が国で初めて出家し、迫害されても信念を捨てずに、海外留学もさらりとこなす、使命に燃えるパイオニア。

A fearless religious pioneer who bravely bore persecution and helped to foster Buddhism in Japan.

もう今や英語案内は当たり前の時代になりましたね。

persecution は迫害や虐待を意味する不可算名詞です。

ここで面白いのは、bore の使い方です。bore は元々、キリなどで穴をあけることを意味する動詞です。トンネルや井戸を掘ることも bore で表現されます。日本語でもよくボーリング調査って言いますよね。そこから転じて、「押し進む、他を押しのけて進む、こじ開ける」などの意味合いを持つようになります。bore persecution で迫害を物ともせずに、信じた道を邁進していく様子が見事に表現されています。

万葉古代学研究講座のポスター

ホワイエに掲示されていた万葉古代学研究講座の案内。

井上さやかさんの講座も予定されているようですね。

『マンガで楽しむ古典 万葉集』を監修された方で、万葉文化館の主任研究員でもいらっしゃいます。

万葉文化館のイベントポスター

オープン15周年を記念して、過去のイベント告知ポスターがずらりと並んでいました。

誠に残念ながら万葉文化館に興味を持ち出したのは最近のことですので、過去のイベントのことはよく分かりません。でも、こうやって見ていると万葉文化館の歴史を身近に感じることができます。

舞妓のスケッチ画

あっ、こちらは辰巳寛さんの舞妓イベントの時のスケッチ画ですね。

5月のイベント期間中に、企画展示室で「舞妓を描こう」と題する特別スケッチ会が催されたようです。辰巳先生の指導のもと、舞妓さんをモデルにしたスケッチ会が開かれました。こういった参加型の体験イベントがあるのも、万葉文化館の懐の深さではないでしょうか。

万葉文化館の駐車券

万葉文化館の駐車券

万葉文化館の駐車場は無料です。

入庫の際にバーが下りてきて駐車券を取るシステムです。出庫の際にはこの駐車券が必要となりますので、大切に保管しておきましょう。駐車場の営業時間は9時から18時までで、18時以降の出庫はできませんので注意が必要です。

象山のクリアファイル

この絵を見ていると、どこからか鳥のさえずりが聞こえてきそうです。

どっしりと存在感のある象山を背景に、細やかなタッチで描かれる小鳥たち。その対比がまた、見る人を絵の世界へと惹き込みます。

万葉文化館ミュージアムショップのレシート

クリアファイルのお値段は通常210円です。

今回はメモリアルイヤーということで、オリジナルグッズ全品に10%の割引が適用されています

ご紹介した絵画の他にも、たくさんの万葉日本画が展示される企画展です。

神山・三輪山を描いた絵にも釘付けになりました。井上稔さんの『斑鳩夕景』、手塚雄二さんの『月読』、浅野均さんの『黄土色(はにいろ)の恋』なども個人的には好きな絵画です。是非皆さんも万葉文化館に足を運んでみて下さい。お気に入りの絵画がきっと見つかることでしょう。