奈良県立万葉文化館の玄関向かって左横に、富本銭の「富」の字を描いた展示物が飾られていました。
黄色く浮かび上がる「富」の文字に、思わず引き寄せられます。
万葉文化館の「富」のディスプレイ。
飛鳥池遺跡で発見された富本銭の「富」を表していることは言うまでもありません。以前に万葉文化館の館内を見学した時、古代の人々が富本銭を鋳造している様子が展示されていたことを思い出します。万葉文化館建設に伴う事前発掘調査において、センセーショナルに出土した富本銭。日本最古の貨幣と言われる富本銭は、万葉文化館とは切っても切れない関係にあります。
七曜を意味する富本銭の七つ星
富本銭をよく見てみると、真ん中の孔は方形にくり抜かれています。
その孔の上下に富本銭の「富」と「本」が刻まれ、左右にはそれぞれ七つの星が描かれています。この七つの星が意味するものは何なのでしょうか?
万葉文化館の玄関口。
古代衣装を身に纏ったせんとくん(笑)
富本銭の左右に見られる七つ星は、陰陽五行思想の陽(日)と陰(月)、そして木火土金水の五行を総称した七曜(しちよう)を表しています。
富本銭のサイズや重量に関しては、唐の通貨・開元通宝(かいげんつうほう)とほぼ同一規格であると言われます。隣国中国の影響を色濃く受けた貨幣であることに間違いはなさそうです。富本銭という名前の由来にも、中国の影響が感じられます。「国や国民を富ませる本(もと)が貨幣である」という、中国の古典が引用されているのです。
国や国民を富ませる本。
そこに刻まれる七曜の思想的背景に想いを馳せます。
「富」の文字に近付いてみました。
土を盛って植物を植えるアレ(笑)ですね。遠くから見ただけでは想像もつきませんでした。
彼岸花の遥か彼方に、飛鳥の地名由来にもなったと伝えられる大鳥の羽易の山を望みます。
10月には近鉄飛鳥駅前を発着点とした「飛鳥学冠位叙任試験~入門編~」が催されます。マップ片手に行われる7㎞のクイズラリー。移動手段は徒歩以外にも、レンタサイクルや周遊バスも認められているようです。成績優秀者は12月の叙任式に招かれるとのこと。明日香村をまるごと会場にしたクイズラリーに参加して、飛鳥にまつわる知識を増やしてみませんか?
富本銭にもちゃんとした意味がありました。
読書の秋、文化の秋と言われますが、秋は格好の学びのシーズンです。
開館当初は有料だった万葉文化館の駐車場も、今は無料で利用することができます。万葉文化館を拠点にして、明日香村の歴史を学び直してみるのもいいですね。