久しぶりに平城宮跡の第一次大極殿を訪れました。
広大な平城京の北方に位置する大極殿。元日朝賀や天皇即位など、国家儀式の際に天皇が出御(しゅつぎょ)する場所です。中心施設の建築意匠には目を見張るものがありました。今回は色とりどりな高欄(こうらん)に注目してみたいと思います。
平城宮跡第一次大極殿の高欄。
束の上に黄色い宝珠を飾ります。向こうに見えている社叢は佐紀神社ですね。中国の五行思想に基づき、五種の色玉が取り付けられていました。
万物を構成する木火土金水!高御座を取り囲む宝珠
五行思想に照らせば、黄色は「中央の土」に当たります。
季節に当てはめれば“土用”です。お寺でよく見る五色幕なども、五行説に基づいています。木(春)、火(夏)、土(中央;土用)、金(秋)、水(冬)と巡っていきます。
白色の高欄。
白は金で、季節は秋を示します。ご存知の方も多いと思いますが、北原白秋の雅号の由来ですね。西の方角に当たり、四神で言えば“白虎”に相当します。
高欄の向こうに見えている植栽は何だろう?
第一次大極殿の北方に広がる植え込みは、今で言う“給食センター”のような場所だったようです。平城宮跡の地図には、推定大膳職(だいぜんしき)と書かれています。大膳職は宮中における官人の食事、並びに朝廷の会食調理を担当していたと言います。
巨大な照明設備と第一次大極殿。
遥か東方に若草山が見えています。
かつては第一次大極殿の東側に、第二次大極殿もあったようです。さすがに復原の予定は無いようですが、第二次大極殿の北側に天皇が住まう内裏がありました。
赤い高欄。
五行説における「火」で、夏と南に対応します。朱雀のイメージそのままですね。
第一次大極殿の南方は、只今工事中です。
既に第一次大極殿院南門は竣工していますが、その両脇の東楼・西楼はこれからです。大きな覆い屋根は東楼で、只今建設作業中でした。右手前の横長の建物は、言わば“巨大な作業小屋”です。東楼、西楼共に各々3年の工期が見込まれているようです。
青色の高欄。
五行説の「木」で、春と東に当たります。青い春の「青春時代」で、四神の青龍と結び付きます。
高欄の向こうに見えているのは市庭古墳(平成天皇陵)ですね。
第一次大極殿の入場通路。
遷都際の年には無かったように思います。
大文字山も望めます。
白壁の長屋風建物は公衆トイレでした。広大な平城宮跡ですから、散策途中に用を足したくなることもあるでしょう。特別史跡とは言え、観光客への配慮が感じられます。
架木(ほこぎ)の断面にも美しい意匠が施されます。
秩序を感じさせる唐草文様です。
黒い高欄もあったはずですが、撮り損ねてしまいました。大極殿の中には、天皇陛下の玉座・高御座(たかみくら)があります。その周囲を鮮やかな五色の高欄が巡っていました。
第一次大極殿隣りの公衆トイレ。
第一次大極殿の見学は無料です。ガードマンが数名常駐なさっていて、こちらの拙い質問にも丁寧にお答え頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。