各地に見られる弘法大師空海が掘ったという井戸。
三輪山を望む桜井市粟殿にも、「弘法の井戸」がありました。
かつての磯城郡役所・大三輪町役場からの出口に当たる”出口橋”を渡り、桜井方面へ向かいます。一本左手の細い道を進むと、外山方面へ左折する角に弘法大師像が見えてきます。
桜井市粟殿の弘法井戸。
笠を被り、右手に錫杖を持つ弘法大師空海。石燈籠の竿には「弘法大師御霊水」と刻みます。
井戸の掘り方を指示した空海!木材振興センター「あるぼ~る」まで歩く
奈良盆地は雨の少ない地域で、水不足に悩まされていたと言います。
溜池が多いのもそのためで、農業用水にも使われていました。水が枯渇する中、弘法大師への帰依も進んでいったのではないでしょうか。
初瀬川沿いに繁茂する草藤(くさふじ)と三輪山。
クサフジはマメ科の植物ですが、これは弱草藤(ナヨクサフジ)なのかもしれませんね。
ナヨクサフジは在来種の草藤よりも茎が細くて柔らかいのが特徴です。訪れたのは5月11日の初夏真っ盛りです。毎年この時期には、あちこちでクサフジの花が開花しています。
虚ろな目をなさっています。
巡礼姿の弘法大師が集落の中に立っていました。
弘法の井戸の案内書。
ある夏の日、身なりも質素な巡礼姿の僧が農家に立ち寄り飲み水を乞われた。
村人は心地良く水を差し出し、僧は礼を言って飲んだが金気のある良水では無かった。
その時、僧は村人に「この隣の畑に井戸を掘ればもっと良い水が湧くだろう」と井戸の掘り方や造り方を丁重に指示し立ち去った。
そして、その場所を掘ったところ、六尺足らずで泉が噴き出しここに良水の井戸が出来た。
その後、井戸掘りを指示した巡礼姿の僧が弘法大師と解り驚いた。[これは室生寺創建前の事である]
村人は早速ここに弘法大師を祀る祠をたて感謝した。
足元に井戸、その向こうには祠が建ちます。
祠の中は確認しませんでしたが、おそらく何かの仏像が祀られているのでしょう。祠の背後、東の方向へ進んで行くとJR万葉まほろば線の踏切があります。
粟殿の踏切。
新緑に色付く三輪山が綺麗ですね。
線路を渡ってさらに細い道を進むと、木材振興センター「あるぼ~る」の敷地へ出ました。道中の電柱には”粟殿”の他にも、”コビキ”という地名が見られます。おそらく木挽町のことでしょう。木材の集積場として栄えた桜井市ならではの地名です。桜井市の高家エリアから見下ろした木材市場を思い出します。
木材の守護神・石寸山口神社も桜井駅の南側に鎮座しています。
木材振興センター「あるぼ~る」の片隅にも祠がありました。
木材の神様が遷されているのでしょうか。
長さの違う立柱が並びます。
柱の上に鳥が止まっていますね。すぐ向かいはスーパーオークワです。
ひょんなことで出会った粟殿の弘法井戸ですが、耳成山の麓にも弘法の井戸がありましたよね。この他にも、大淀町薬水や大和高田市有井にも空海ゆかりの井戸があるようです。