斑鳩町の赤染井『三井の井戸』

法輪寺の北西方向に井戸があります。

聖徳太子が掘ったとも伝わる井戸で、「赤染井(あかぞめい)」「三井の井戸」として国史跡に指定されています。レンガのような塼(せん)を施した特殊な構造で知られ、三井の集落の中にひっそりと佇んでいました。

三井の井戸

三井の井戸(赤染井)。

四方を木の柵で囲います。聖徳太子が開掘した3基の井戸の一つで、山背大兄王など太子の子供の産湯として使われたのではないかと言われています。

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法輪寺の別名「三井寺」の由来にもなった井戸

赤染井は ”産湯の井戸” だったのか。

歴史に名を残す人物には、生誕地と共に産湯の井戸が各地に伝わります。そう言えば、藤原鎌足の産湯の井戸が明日香村にあったことを思い出します。山背大兄王は聖徳太子の子であり、法輪寺を建立した人物でもあります。

三井の井戸

井戸は屋根に覆われていました。

「三井の井戸」は斑鳩三塔で知られる法輪寺のすぐ近く、徒歩にして3,4分の距離でしょうか。周辺に道案内は付いておらず、地元の方に伺って辿り着きました。

法輪寺三重塔

法輪寺三重塔と山門。

門前を左手に回り込み、北西方向へ進むと三井の井戸があります。

法輪寺の所在地は斑鳩町三井で、井戸の名前がそのまま地名にもなっています。法輪寺の別名を「法林寺」「御井寺」「三井寺」と言い、井戸との深い関わりがうかがえます。聖徳太子の病気平癒を願って、山背大兄王と由義王(ゆぎおう)が建立したお寺と伝わります。

三井寺の瓦

「三井寺」と刻む瓦。

子が親を想って建立したのが三井寺(法輪寺)で、親が子を想って掘ったのが井戸なのでしょうか。

法輪寺三重塔

法輪寺三重塔。

三重塔は昭和19年に落雷のため焼失しています。

ちなみに井戸が史跡に指定されたのも昭和19年のようです。三重塔は焼失以降、住職2代にわたる努力によって昭和50年に再建されました。

赤染井のアクセス道

法輪寺門前から左手奥を目指します。

三井の井戸へ行くには、法輪寺門前にある三井観光自動車駐車場を利用するといいでしょう。

三井の井戸アクセスルート

最後の曲がり角を左へ・・・井戸が見えていますね。

民家の間を縫うようにアクセスルートが伸びています。

三井の井戸

井戸枠には立派な石が使われています。

ちょっと中を覗き込むと、側壁上部にはレンガ積みのような構造が見られました。

赤染井

柵の中に入ることは出来ませんので、体を乗り出して覗き込む格好です。

井戸の深さは4m余りで、途中で少し膨らんだ筒状になっています。

三井の井戸

井戸の後方から。

おそらく「先に井戸ありき」で周辺道が整備されているのでしょう。

井戸の手前で少し道が曲がっていました。昔のままの空間が守られ、そこに居るだけでタイムスリップしたような感覚を覚えます。

史跡三井の案内板

史跡三井
所在地:斑鳩町三井井垣1547-2

この井戸は明治時代には埋まっていましたが、昭和7(1932)年に発掘調査が実施されました。井戸の規模は、深さ約4.24m、直径約0.9mを測り、途中が少しふくれた筒状になっていて、底部の構造は、組み合わせた四個の石の隙間から水が湧き出るようになっています。
そして側壁は、底から約1.15mの高さまでは石積みで作られていて、その上方約3mの部分は扇形をした「塼(せん)」と呼ばれている焼き物(レンガのようなもの)を積んだ珍しい構造をしていることから、国の史跡指定を受けています。

法輪寺の別名が「三井寺(御井寺)」であることからも、この井戸がとても重要視された存在であったことがうかがえます。またこの井戸は、聖徳太子が掘った三つの古井戸の一つ「赤染井(あかぞめい)」との言い伝えがあります。

古代朝鮮の井戸の形式を今に伝えています。

聖徳太子が掘ったとの伝説が残りますが、はたして山背大兄王などの我が子の産湯として掘られたのか、その史実が気になります。

赤染井の周辺

赤染井の周辺。

井戸の周りだけ異空間で、時間が止まっているかのようです。

三井神社

三井神社。

井戸のすぐ近くに小さな祠がありました。

三井神社

石段を登った所に鳥居が建ちます。

この神社にもひとかたならぬ歴史を感じます。

三井神社

石段の手前に方形の石が埋め込まれていました。

一種の車止め? あるいは法隆寺の鯛石のように何かの謎を秘めているのでしょうか。

三井の井戸

井戸へ続く最後の曲がり角。

塀の手前の穴が気になりますね。五角形の穴の下には、昔のものであろう石柱が見えます。かつては標石の役目を担っていたのかもしれません。

塀の穴

何かを祀ったのでしょうか。

中宮寺の近くにも同じようなものを見つけました。

三井の井戸

この角の石を見えなくするには忍びなかったのか。

行く手に赤染井を見据える位置に、往時の姿を留めます。

三井の井戸の道標

法輪寺の下手まで来ると、三井の井戸を示す道標がありました。

厄除霊場の松尾寺も案内されていますね。

今回は法輪寺を拝観する時間が無かったのでスルーしました。

法輪寺の伽藍は法隆寺式のようで、法隆寺西院伽藍のおよそ三分の二の規模で設計されています。ご本尊の薬師如来をはじめ、重要文化財の仏像を多数揃えるお寺です。次回は是非、法輪寺の境内にも足を踏み入れてみようと思います。

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