正暦寺の紅葉をご案内致します(2009年11月)。
奈良五聖地の一つに建つ正暦寺。
正暦寺は「錦の里」と呼ばれる奈良県屈指の紅葉の名所として知られます。
正暦寺本堂。
ご本尊の金銅薬師如来倚像を安置します。
亡くした妻を黄葉の中に探し求める人麻呂
正暦寺の宗派は菩提山真言宗です。
山号の菩提山は大和の東山エリアを印度の五仙山になぞらえ、鹿野苑・誓多林・大慈山・忍辱山・菩提山と称したことに因みます。
柿本人麻呂の万葉歌。
秋山の 黄葉(もみぢ)を茂み 惑(まど)ひぬる 妹(いも)を求めむ 山道(やまぢ)知らずも
亡くなった妻を山深い紅葉の中に探し求める人麻呂の姿が思い浮かびます。
万葉集に詠われる名歌ですが、福寿院客殿の山門下に案内されていました。
万葉歌における「もみじ」はそのほとんどが紅葉ではなく、黄葉と表記されています。黄葉の方が紅葉よりも早く散ってしまうようです。紅葉狩りの観光客を長く楽しませてくれるのは紅葉の方ですが、なぜか万葉集に詠われるもみじは黄葉と表現されているようです。
参道沿いの紅葉風景。
山道を歩きながら秋の風情に酔い痴れます。
こちらは銀杏の黄葉ですね。
菩提仙川に沿って参道が続きますが、自然の中の紅葉は見ているだけで癒されます。さすがに三脚を使用する人はいらっしゃいませんでしたが、たくさんの人がカメラ片手に紅葉風景を撮影なさっていました。
境内や参道のあちこちには南天が見られます。
本堂下の供養塔・墓石群を背景に撮影。
毎年秋のこの時期には、御本尊の秘仏・薬師如来倚像が特別公開されます。
辺りは紅葉で埋め尽くされ、これ以上にない贅沢な空間を楽しむことができます。
「秋山の黄葉を茂み~と詠った人麻呂の心象風景を察します。紅葉が茂っているために道に迷ってしまった・・・道に迷うほどの紅葉とは、いかほどの風景が投影されていたのでしょうか。あるいは、本当に道を塞ぐほどの紅葉だったのか。
紅葉のピークは11月中旬から12月初旬に掛けてでしょうか。毎年11月下旬の勤労感謝の日を含めた連休には多くの観光客で賑わいます。
福寿院客殿の借景庭園。
奈良県内にもこんなに素敵な紅葉スポットがあります。
人麻呂に紅葉を愛でる余裕は無かったのかもしれません。でも、少なからずその紅葉に癒される部分もあったはずです。
正暦寺本堂。
正暦寺の正式名称は、菩提山龍華樹院(ぼだいせんりゅうげじゅいん)といいます。
菩提山真言宗の大本山。
大本山と言うだけで、何か有難味を感じてしまいますよね。
観光客の心を惹きつけてやまない桜と紅葉。
春の桜にはポップな印象がありますが、やはり紅葉は深い。
そんな感じがするのです。
冬ごもりの前の艶やかさは深く濃く、私たちの心に刻まれます。
正暦寺は正暦3年(992年)、一条天皇の勅命を受けて兼俊僧正(九条兼家の子)が創建しました。
元号がそのままお寺の名前になっています。
談山神社や長谷寺の紅葉もおすすめですが、正暦寺の紅葉もなかなかのものです。
正暦寺は日本清酒発祥の地としても知られます。
かつて、正暦寺の横を流れる渓流の水を使って「菩提泉酒」という上質のお酒が造られていた歴史があります。京都などで珍重されたお酒だったようです。
清冽な水が流れる菩提仙川。
山の辺の道ハイキングに疲れた人々の喉を潤す清流です。
酒造りには綺麗な水が欠かせませんよね。
正暦寺の紅葉が綺麗であることもうなずけます。
南天の鮮やかな赤色も大自然の贈り物なのでしょうか。
正暦寺の鐘楼。
本堂の手前にある鐘楼にも歴史が感じられます。
正暦寺の拝観料は500円。正暦寺へのアクセスは、JR.近鉄奈良駅よりバス米谷町行き柳茶屋下車徒歩30分となっています。