匂いの語源!梅を嗅ぐ

嗅覚に訴えかけてくる梅。

梅の香りは春の訪れを告げます。

やはり梅は嗅ぐものだなぁと、つくづく実感します。

梅の花

大和郡山城跡の盆梅展

かぐわしい梅の香り。嗅覚は五感の中でもややもすれば軽視されがちですが、どっこい一番鋭敏なセンサーを持っているのではないかと思わせます。

「匂い」という言葉は国字のようですが、「にほひ」の語源はどこから来ているのでしょうか。

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視覚を表した匂い!赤く萌え出る「丹秀ひ」

そもそも「にほひ」とは、視覚表現の一つだったようです。

鮮やかに赤くもえ出る様子を「丹秀ひ(におい)」と言い表しました。目で見て素晴らしかったのです。この場合の「秀」は”大和は国のまほろば”の「真秀呂場」にも見られますね。

盆梅展

古語の「にほひ」はいろは歌にも登場しています。

冒頭の”いろはにほへと(色は匂へど)”の箇所です。視覚的に赤い色が鮮やかだったのでしょう、その見た目を「いろはにほへと」で表現しています。

あらゆる花に先駆けて梅は開花します。

桜よりも、そしてモクレンよりも早く咲きます。DNAにインプットされた情報は、今も昔も変わることはありません。まだ雪の降る中、にほふが如く咲く梅は早春の贈り物です。梅は嗅ぐものです。松は聞き、竹は見るものと申します。古来、日本人の心に沁みついた松竹梅は、各々の器官とつながっているのです。

大和郡山城跡盆梅展

匂いの語源を辿るなら、「丹穂ひ(におい)」の漢字を当てることも出来るでしょう。

稲穂の「穂(ほ)」。

一番先っぽにある穂は頂(いただき)の象徴であり、優れたものを表します。丹塗りの艶やかな花が咲くだけで、自然と心が踊り出します。

青丹よし 奈良の都は 咲く花の にほふがごとく 今盛りなり

奈良を詠った有名な短歌ですね。

匂ふがごとく今盛りなり・・・幹から茎、茎から枝へ、そしてその先っぽに付く花は稲穂の”穂先”と同じ位置とも言えます。艶やかな花は人間の顔の先っぽに付いている”鼻”と同じルーツを持ちます。

花と鼻。

お互いに音を共有しているとは言え、似て非なるものです。しかし、言葉の起源としては同じなんです。不思議ですよね。「初っ端(しょっぱな)から」「端から(はなから)」などの”端(はな)”も同じです。共通しているのは「先っぽにあるもの」ということです。

植物の部位と顔のパーツは連想によって結び付きます。

古代人たちはテレビもラジオも、文字も無い時代に生きています。もちろん、スマホなんて有りません。目を引く建造物も無かったでしょう。目にするものと言えば、大自然の中の太陽と星、そして各々違っていたであろう人の顔。種類の多い花にも目を奪われていたことでしょう。そんな環境の中で、人の顔と植物が結び付いていったのも頷けます。

植物の芽は目、花は鼻、実は耳、葉は歯に対応しています。

春先にぷっくりと膨らむ芽は、確かに目の形に似ています。たわわに結実する実は耳たぶを連想させます。たくさん並んだ葉は、口の中の歯と結び付いたのでしょう。さらに言えば、火を熾す(おこす)際に頬を膨らませたことから、炎(ほのお)と頬(ほほ)が結び付いたとも言われます。

言葉の歴史を紐解けば、ハイセンスな古代人たちとつながることが出来ます。

花が匂うのは、嗅覚を刺激する以前に目にも鮮やかだったことによります。梅の匂いを嗅ぎながら、春本番を待ち侘びる季節となりました。

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