珍しい高級魚の恵比須鯛(えびすだい)が入荷しました。
キンメダイ目イットウダイ科の魚で、比較的浅い岩礁域に棲息しています。鋼のようなウロコを身に纏い、鮮やかな赤色をしています。皮に甘味があって美味しいと聞いていたので焼霜造りにしてみました。
エビスダイの姿造り。
えびす鯛、寒ブリ、鮭、真鰺、サザエ、イクラの刺身盛り合わせです。金時人参の蝶や赤大根の菊花で飾ります。盛り付けてみると、改めて口の大きい魚であることを実感します。
恵比須鯛の鱗チップス!七福神のシルエット
エビスダイの名前の由来の一つに、七福神・恵比須様があります。
水洗いをして内臓を抜いた後、えら蓋から手を突っ込みます。頭部のかなり大きい魚なので、手首まですっぽり入ります。そのまま尾びれを下に垂らし、だらんと持ち上げてみます。こんなことが出来る魚はそう多くないのですが、その姿がまた愛嬌たっぷりです。七福神の恵比須様さながらのシルエットというわけですね。
硬い鱗をまとうエビスダイ。
尾びれの付け根が特徴的ですね。細くくびれ、その先に鰭が付いています。
大きな口をしています。
エビスダイは肉食魚ですが、歯はそんなに鋭くありません。
手首までスッポリ(^.^)
えらぶたを広げてみると、頭の大きさがよく分かります。
歯は細かいやすり状ですね。触ってみると、摩擦を感じました。
舟盛りにもよく映えます。
エビスダイには幾つかの別名があり、鎧鯛(よろいだい)、具足鯛(ぐそくだい)とも呼ばれています。いずれも硬い鱗に由来する名前で、英名はずばり Japanese soldierfish です。soldier とはまさしく兵士を意味します。
エビスダイの鱗チップス。
鱗を乾かした後、そのまま油で揚げます。油に投入した直後は激しい音が上がります。ところが、あっという間に水分が抜けて静かになります。ものの10秒ほどでしょうか。
パリパリ、サクサク!実に食感のいい揚げ物の出来上がりです。
ざるに上げた恵比須鯛の鱗。
ガラスのような、そして鋼鉄のようなウロコです。うろこ取りで一生懸命はがし終えました。
先端にギザギザ模様が入っていますね。
この硬い鱗が、鎧武者に例えられるエビスダイを守っています。
三枚おろしで気付いたことですが、エビスダイの腹骨は深く入っています。
かなりしっかりとした太い骨が、まるでマゴチのように入っています。逆包丁で腹骨上部を外した後、骨抜きで一本一本抜いていってもいいでしょう。背側の身がかなり分厚い印象も受けました。
焼霜造りの準備。
バットに氷を敷き詰め、皮目を上にして並べます。
この後、バーナーで適度に炙ります。実に綺麗な色合いの皮ですが、エビスダイの皮には旨味が詰まっています。
えらぶたの上部に棘のようなものが見られます。
一枚一枚の鱗が芸術品のようですね。とてもアーティスティックな魚です。
えらぶたを持ち上げます。
目の周りの鱗も芸術性に富んでいます。
エビスダイは夜行性の魚のようです。群れは作らず、単独行動で移動します。今回入荷したエビスダイは40cmほどの大きさで、鹿児島で水揚げされた個体です。
真正面から。
面白いアングルですね(笑) 実はエビスダイ、水族館でも人気のようです。前を向くと、まるでこちらを覗いているかのような姿に魅入ります。眉間に当たる部分にも、規則的な模様が入り硬そうです。
刺身で頂くなら、皮引きは無用です。
皮を残して焼霜造りや皮霜造りで頂きます。塩焼きにしても絶品だと言います。煮付けや鍋の材料にも向いているでしょう。オールラウンドに利用できる有難い魚です。
何より見た目が華やか!
恵比須鯛(えびすだい)という名前もいい。祝い事にも喜ばれるでしょう。ただ残念なのは、個体数が少ないこと。頻繁にお目にかかれる魚ではないのです。
背鰭を立ててみます。
鋭い背ビレですね。婚礼料理に常時入荷するなら言う事も無いのですが、そういうわけにもいきません。入荷量が少なく、希少性に富んだ魚です。
背鰭は前と後ろで、二手に分かれているようです。
エビスダイは体高のある魚です。背側に包丁を入れる時は、丸く弧を描くようにおろしていきます。
魚の分類に使われる目科属。
エビスダイはキンメダイ目イットウダイ科アカマツカサ亜科エビスダイ属に入ります。最も細分化された”属”にはエビスダイ属が存在するんですね。
ヤスリのような細かい歯。
上唇の真ん中が凹んでいますね。
えびす鯛ならではの料理。
うろこチップスがこれだけ美味しいのは、エビスダイたる所以です。
姿造り以外にも、普通に三点盛りでお出ししました。
四方を海に囲まれた日本には、まだまだ多くの魚が暮らしています。限りある資源であればこそ、頭の先から尻尾の先まで美味しく頂きたいものです。