客室の一つに舟底天井が見られます。
天井の中央が高く、両端へ流れる構造の粋な天井です。
勾配天井の一種ですが、屋形天井(拝み天井)ほど急ではなく、緩やかな傾斜が特徴です。両流れの屋根構造には、どんな意味が込められているのでしょうか。
大正楼客室の舟底天井。
中央に飾り棟木を一本通し、両サイドへ流れています。
平らな天井に比べると、少し部屋が広くなったような気がします。開放感を感じさせる構造ですね。
出航!人生の旅立ちを祝う松竹梅の襖絵
昨今は結婚式の会食も少人数化が進みます。
三輪明神の結婚式も一昔前までは30名様以上の披露宴が主流でしたが、近ごろは10名様前後で祝うご親族の会食が人気です。
大広間を使用するには広すぎるため、こちらの客室をよく利用します。舟底天井の客室収容人数は約15名様です。船に ”旅立ち” が重なり、人生の門出を祝うにはふさわしい場です。
松竹梅の襖絵。
出入口の布張り襖には、吉祥の松竹梅が描かれます。
ぶら下がるコードペンダント型ではなく、棟木に吸い付くような照明です。
わずかな傾斜で柔らかく客室を包み込みます。
当館の船底天井は渡り廊下にも見られますが、客室の方が傾斜が緩やかです。今では珍しくなった舟底天井ですが、昔の茶室や浴室などにもよく用いられていたようです。
控え間への上り口には、三角材の足場が組まれます。
こちらの客室は、敷地内の北西隅に位置しています。
家相の観点から言えば、北西には蔵が設けられます。財の象徴である蔵は北西に建てられることが多いものです。創建当時のことを思えば、創業者である曾祖父もこの部屋をドル箱ととらえて設計したのかもしれません。
御所車の屏風も控えます。
船底を頭上から被せたような格好の天井。
昔の職人さんによる建築意匠には、目を見張るものがたくさんありますね。