今はもう廃盤となった昭和型板ガラス。
レトロな趣に魅入る人も多いと聞きます。大正楼館内にも様々な種類の型板硝子が残り、ノスタルジックな雰囲気を醸しています。
昭和型板ガラス「笹」。
客室「御笠」の引戸に施されています。
日本の夏を連想させる笹ですが、製造年度は1968年(昭和43年)8月のようです。厚さ2mmの板ガラスで、メーカーは日本板硝子株式会社です。
石目、若葉、ダイヤ、スイトピー、なると!日本のノスタルジア
型板ガラスの種類は実に豊富です。
国内板ガラスメーカーの間で繰り広げられた型模様戦争がその発端になっています。ガラス製造には大きな資本が必要となるため、三社(日本板硝子、旭硝子、セントラル硝子)の間で次々と新しいデザインが生み出されました。
型板ガラス越しに中庭を望みます。
型板ガラスは片面に彫刻が施されており、その反対側にも凹凸が見られます。向こうが見えないブラインド効果があり、風呂場やトイレなどでも好んで使われました。
昭和型板ガラス「石目」。
こちらは風呂場の引戸にデザインされています。石を削り取ったような荒々しいタッチが特徴で、まるで貝殻の化石を見ているようです。
昭和型板ガラス「若葉(わかば)」。
「笹」に先立つこと一年、昭和42年に製造されています。
こちらは「ダイヤ」。
ダイヤモンドの輝きを思わせる型板ガラスです。昭和27年の製造で、かなり昔から愛されてきたデザインのようです。
日本の伝統文様にも馴染みのある竹。
お祝い事の松竹梅にもセッティングされ、何かと身近な存在ですよね。松は聞き、竹は見て、梅は嗅ぐと申します・・・日本の風流を五感で感じる時、竹は視覚につながっているようです。ガラス越しにほのかな灯りが点り、とてもいい雰囲気ですね。
「若葉」の意匠は、客室御笠のトイレ窓に取り付けられています。
こちらのお部屋は舟底天井のお座敷で、少人数の宴会などでもご利用頂いています。
昭和型板ガラス「スイトピー」。
小さなダイヤが連なるラインで、蝶のように舞うスイートピーが表現されています。
旭硝子株式会社が製造した型板ガラス「なると」。
地紋に「まさご」を施し、鳴門の渦潮がデザインされています。一面に散りばめられた真砂を素地に、大柄な渦巻模様が全面を覆い尽くします。
復刻が望まれますが、今となっては致し方のないことですね。
令和時代には大変貴重なガラス素材です。
リフォームなどで取り壊す際は、再利用を考えた方がいいでしょう。実はガラスの価値を十分に理解していなかった数年前、あろうことか廃棄処分にしてしまった苦い思い出があります。昭和型板ガラスはランプや小物、皿として新たな息吹を吹き込める素材です。再生可能な材料だけに、これからも大切にしていきたいと思います。