端午の節句を控えた4月初旬、鯉の滝登りを描いた掛軸が登場しました。
男の子の立身出世を願う縁起物ですが、勢い良く跳ねる鯉に開運を託します。
雅堂の『五匹鯉昇図』。
絹本に描かれた艶っぽい鯉で、鮮やかな色彩が目を引きます。ふくよかな鯉が水しぶきを上げながら滝を登って行きます!この時期ならではの掛軸ですね。
初夏に花咲くシャガ!垂風帯なびく昇鯉の掛軸
掛軸の形状は縦長ですから、滝をはめ込むには適しています。
滝とくれば鯉!伝統の節句を題材にした掛軸が客室を飾ります。中庭にはシャガが開花し、季節は確実に歩を進めていました。
大正楼中庭に咲くシャガ。
妖艶で美しい花ですね。石楠花で知られる岡寺の境内にも咲いていたのを思い出します。シャガの向こうには、丸く穴の開いた雪見灯籠が見えます。
五尾の鯉が勢い良く昇って行きます。
かなり対象に寄った構図で、滝全体が描かれているわけではありません。その分、鯉そのものが強調されています。競うように上がって行く様子を、我が子の成長に重ね合わせます。
静止画ですが、動きが感じられますよね。滝のマイナスイオンが届きそうです。
一番下に描かれる鯉。
体をくねらせ、先行く鯉に続きます。
右下には、雅堂の署名と落款がありました。
掛軸の上部から風帯(ふうたい)が垂れ下がります。
掛軸の部位にも色んな名前がありましたね。
風帯に風鎮!掛軸の部位を学ぶ客室
季節ごとに取り換える客室の掛軸。 じっくりと掛軸を見ることもありませんでしたが、あらゆる経済活動がストップした非常事態宣言下、ひょんな機会を頂くこととなりました。今まで気にも留めなかった掛軸の各部位・・・その名前を知ることになりました。 花...
天地を三等分するように、2本の帯が下がっています。客室内に風は吹いていませんが、鯉の勢いに押されて揺れているようにも見えます。
シャガは鯉のぼりの季節に咲く花ですね。
今年は随分早いような気がします。暖冬で桜の開花も早かったですが、シャガもその影響を受けているのかもしれません。
昇鯉(しょうり)の掛軸を眺めながら、季節の移ろいに身を置きます。