結婚式のお祝い料理に生ハムの蛇籠巻をお出し致しました。
穴の開いた蓮根は「先が見通せる」ということで、お正月のお祝い料理に使われる食材ですが、お二人の前途を祝う ”視界良好” の披露宴のお席にもぴったりです。蓮根にはビタミンB12という、野菜にはあまり含まれない栄養素があります。貧血予防にも有効とされ、その健康食材としての地位は揺るぎません。
大神神社の披露宴でお出しした生ハムの蛇籠巻。
蓮根に生ハムを組合せ、紅白のお祝い料理に仕立てます。食感の違いがまた絶妙なハーモニーを奏でます。巻物の芯にする食材はあさつきでもいいのですが、今回はブロッコリーの茎を使ってみました。蛇籠蓮根の料理は度々作っているのですが、生ハムの代わりにスモークサーモンを使うことがほとんどです。スモークサーモンの馥郁たる香りも捨て難いのですが、生ハムの適度な塩気もまたグッドです。
万葉集に「はちす」の名で登場する蓮根
蓮根の歴史は意外と古く、既に万葉集の時代には「はちす」の名前で文献に出ています。
蓮の花が散ると、蜂の巣に似た花托(かたく)が姿を現します。はちすの名前の由来にもなっているわけですが、古代人たちのイメージの広がりを感じさせます。
蓮根はおろし金ですりおろして使えば、もちもちとした食感が楽しめます。蓮餅(れんもち)の醍醐味はその歯応えにあると言ってもいいでしょう。シャキシャキした食感を楽しむなら、やはり定番の甘酢漬けに限ります。
蓮根の穴から生ハムの赤が透けて見えます。
蓮根に火を通したら包丁で桂むきにします。その後すぐに島唐辛子を入れた甘酢に一晩漬け込んで、十分に味を染み込ませます。
お刺身にもできる新鮮な鯔(ぼら)が入荷したので、柚子の香りをまとわせた柚庵焼にします。
冬の食材であるボラと柚子を合わせた一品です。
身の締まった新鮮なボラが入荷しました。
ボラの算盤玉は塩焼きにすると美味しいですよね。
臭みが気になると言う人も多いボラですが、その生息域によっては全く臭いのしないボラもいます。このボラはまさしくそんな旨味たっぷりのボラでした。
巻柿作りの工程。
使う干し柿は「あんぽ柿」です。鮮やかなオレンジ色が映える、とても美味しい干し柿です。クルミと柚子の皮を中に入れて巻き込みます。
桂むきにした蓮根。
蓮根を選ぶ際には、漂白ものよりも本来の皮色に近いものを選ぶことをおすすめ致します。肌色に近い焦げ茶色をした蓮根が良品です。
スイレン科ハス属の蓮根。
お正月前にはやや価格が上昇しますが、お祝い料理にはマストアイテムと言っても過言ではありません。今回は蛇籠に切りましたが、花形・矢羽根・雪輪など飾り切りにも向いている野菜です。
蓮の葉なども日本料理の演出に使われることがあります。
蓮の葉を使った掻敷(かいしき)などは、夏のすがすがしさを表現します。蓮の葉で包んで蒸せば、独特の爽やかな風味を付けることもできます。若葉は混ぜご飯のアクセントにもなります。
実に使い勝手のいい蓮ですが、何よりもその花の美しさは筆舌に尽くしがたいものがあります。今夏に訪れた藤原宮跡を彩る蓮の花は圧巻でした。仏教とも関わりの深い蓮は、まさに日本の歴史そのものと言ってもいいのではないでしょうか。