橿原考古学研究所付属博物館の前庭に、珠城山1号墳の組合式石棺が移築されています。
この場所には束明神古墳の復元石槨や竜田御坊山古墳の石槨も展示されており、古墳好きの方にはおすすめのスポットとなっています。
珠城山1号墳の組合式箱式石棺。
家形石棺に比べれば、明らかに簡易な造りの石棺ですね。板石を組み合わせることによって箱型に組まれた棺です。桜井市の珠城山古墳群は国史跡に指定されています。所在地は桜井市大字穴師字玉井で、穴師山から派生する丘陵上に3基の前方後円墳が隣接して築かれています。
多様な副葬品が出土した6世紀後半の棺
珠城山1号墳の組合式石棺。その石棺内、および周辺からは実に様々な副葬品が出土しています。
挂甲、三葉環頭大刀、剣菱形杏葉をはじめとする金銅製馬具、鉄鏃、土器、金銅製勾玉やガラス玉などの装飾品等々が発見されたのです。多岐に渡る副葬品からも、その被葬者が当該地域における盟主的存在であったことがうかがえます。
組合式石棺の解説板。
二体分の遺骨も棺の中から見つかっています。
陰湿なイメージのある石棺ですが、こうして屋外展示されていると何だか拍子抜けな感もありますね(笑)
橿原考古学研究所附属博物館の入口付近。
このすぐ前に駐車場が完備されています。
重厚な雰囲気の建物で、いかにも「橿考研(かしこうけん)」といった趣が感じられます。
少し破壊されたような箇所も見られますが、概ね良好な形で残っています。
珠城山1号墳の石室ですが、今も後円部に残されており中に入ることができます。少し改変を受けた部分も見受けられますが、ほぼ古墳時代そのままの姿を残しています。墳丘上を自由に散策することもでき、2号墳の前方部からは西に広がる奈良盆地一帯を見渡すことができます。
独立した丘陵上に、古墳時代後期の3基の前方後円墳が連なる珠城山古墳群。3号墳こそ前方部の一部を残して大半が消滅してしまっていますが、1号墳と2号墳はほぼ原形をとどめる形で残っています。
苔類が除去された竜田御坊山古墳の石槨
今回の橿考研博物館訪問で、もう一つ目を引いたのが竜田御坊山古墳の石槨です。
竜田御坊山古墳は、斑鳩にある龍田神社の裏山で発見されています。この古墳も1号墳から3号墳まであり、その3号墳の横口式石槨が屋外で展示されていました。
移動前と移動中の石槨の様子が写真付きで案内されています。
野外展示していた竜田御坊山古墳の石槨を館内で展示するため、表面に付着した苔類を除去する作業を行っています。
なるほど、やはり屋外展示していると苔も生えてくるのですね。
苔がほぼ除去されたであろう竜田御坊山古墳の石槨。
テントの中できれいさっぱりとしたご様子でした(笑)
御坊山の名前は、竜田御坊山古墳の所在地である御廟山に由来します。御廟山が訛って御坊山になったと言われます。古くから皇族墓所の伝承を残す場所とされ、その被葬者は聖徳太子の孫クラスの人物ではないかと言われます。
桜井市の赤坂天王山古墳のように、実際に石室の中で棺を見学するのも神秘的なのですが、やはり明るい太陽の下で隈なく見られるのもおすすめポイントですね。
桜井市穴師にある珠城山1号墳の石室見学を終えたら、その次は橿考研博物館の庭にある組合式石棺を見に行きましょう。