禅の世界観に浸れる企画展。
奈良県立美術館開催の『禅(ZEN)関連企画展 雪舟・世阿弥・珠光・・・中世の美と伝統の広がり』を見学して参りました。達磨寺所蔵の重要文化財「達磨大師坐像」を筆頭に、多岐に渡る禅の世界を堪能することができます。改めて禅ワールドって広いんだなぁと思いました。
禅の世界が楽しめる奈良県立美術館の企画展。
雪舟の水墨画、世阿弥の能、さらには村田珠光の茶の湯の世界が館内展示されていました。厳しい印象のある禅の世界ですが、様々な分野に影響を及ぼしていることが分かります。日本文化の源流にある禅とは、一体何を意味するのでしょうか。奈良県立美術館のチラシによれば、”禅(禅定)とは、心が定まり静かな状態のこと” と案内されています。
現世での悟りの境地を目指す禅宗にも、かつて様々なアプローチが試みてこられたものと思われます。今年の2月に訪れた人物画(美人画)展示も良かったのですが、色の無い深遠な世界が描かれる水墨画も違った趣でおすすめです。
太子道でつながる磯城郡3町の魅力紹介@1階ギャラリー
今回の企画展は、2階の会場全てが写真撮影禁止でした。
大和国中(磯城の里)を紹介する1階ギャラリー部分は撮影OKでしたので、筋交道で知られる聖徳太子ゆかりの磯城郡三町を中心に案内を進めて参ります。
唐古鍵遺跡の絵画土器。
田原本町の唐古・鍵考古学ミュージアムで見た楼閣模型を思い出しますね。今も国道24号線を走っていると、渦巻き状の棟飾りを付けた楼閣が視界に入ってきます。田原本町のシンボルのような建物ですが、只今公園整備が進んでおり、今後の展開が楽しみなエリアでもあります。
楼閣が描かれた土器の解説文がありました。
唐古・鍵遺跡(弥生時代中期)複製
この時代の絵画土器として、最も著名なものが、この土器である。この土器片には、渦巻きの棟端飾りがついた屋根が上下に2つ描かれている。このことから、この建物は、2階建て以上の建物と考えられる。
弥生時代の人々は、土器に高床建物や人、鹿、魚、鳥といった絵を描いたが、これらのモチーフは、ムラの周辺にありふれたものだった。弥生時代の建物といえば、高床建物や竪穴住居が思い浮かぶが、唐古・鍵遺跡には、当時としては珍しい重層建築物が建っていたのかもしれない。
弥生時代に建っていた重層建築物・・・間違いなくその時代の人々にとって、ランドマーク的存在であったことがうかがえます。画期的な建築物ですから、土器にデザインしてみたくなるのも分かりますよね。
紅葉風景の向こうに奈良県立美術館が見えています。
新聞紙面の紅葉だよりでは、「奈良公園の紅葉が見頃」を迎えているとのことでしたが、この辺りは少し終わりかけのような気がします。
奈良県文化会館前の紅葉。
こちらは少し色付きがいいようです。
県立美術館の1階ギャラリーでは、大和で最初に建立された禅宗寺院・補巌寺(ふがんじ)も紹介されていました。世阿弥と補巌寺の関わりを伝える納帳が展示されており、その歴史を偲ぶことができます。能楽観世流の世阿弥は補巌寺に参学しており、その妻と共に永く菩提を弔われています。
奈良県立美術館前の横断歩道案内。
奈良県立美術館は奈良県庁の北側に位置しています。道を挟んで西側には奈良県文化会館があり、辺り一帯には文化の香りが漂います。横断歩道まで行くのがつい億劫になりがちですが、ここは注意が必要です。きちんと交通ルールを守ってアクセスするように致しましょう。
館内には東京国立博物館のポスターも貼られていました。
なぜか達磨大師には、斜め上を睨み付ける姿が多いですね(笑)
ぎょろっとした大きな目で、その瞳は上方を向いています。禅宗の開祖である達磨大師は、座禅を9年間も続けたと伝えられます。その結果、手足が腐ってしまったのだそうです。伝説の一つなのかもしれませんが、ダルマに手足が無い理由が分かったような気も致します。
奈良県立美術館玄関口前のせんとくん。
すっかりお馴染みのマスコットキャラクターですね。
企画展の開催期間は、10月15日(土)~11月27日(日)までとなっています。
入口付近には会場案内図と出品リストが置かれていました。
2階の会場は第1展示室から第5展示室まで分かれています。それぞれにテーマが決められており、頭の整理をしながら見学することができます。
2階の展示を見終えて1階に下りてくると、磯城の里の展示コーナーがありました。
観世流発祥の里・川西町、歴史と愛の町・三宅町、そして弥生文化が息づくまち・田原本町が紹介されています。「日本文化のゆりかごを巡る」と題し、太子道(筋交道)でつながる3町の歴史を学ぶことができます。
観覧記念の写真撮影コーナーのようです。
唐古・鍵遺跡のマスコットキャラクター「楼閣くん」が微笑みかけます。
瓢箪山古墳の写真ですね。
三宅町にある前方後円墳(全長35m)です。
低湿地帯に群集する三宅古墳群の中の一つで、墳丘上には祠があって信仰の対象にもなっているようです。円筒埴輪片や須恵器などの土器片も出土しています。
瓢箪山古墳周辺の航空写真。
高山古墳、恋人の聖地「ベルモニュメント」なども見られます。
三宅町がなぜ愛の町なのか?実は、万葉集に詠われた愛の花「あざさ」が町おこしに一役買っているようです。「恋人の聖地/歴史と愛の町屯倉」選定2周年記念に、2つのモニュメントが完成しています。
ベルモニュメントは三宅町中央公園にあり、毎日午後5時15分から9時まで太陽光パネルの電力でLEDライトが点灯します。夜景のベルもロマンチックで、恋人たちが集う場所として人気を集めているようです。
こちらは黒田大塚古墳のパネル写真。
古墳時代後期の前方後円墳で、田原本町大字黒田にあります。出土品の一部が、唐古・鍵考古学ミュージアムに展示されています。
近鉄田原本線の黒田駅から南へ向かうと、黒田大塚古墳にアクセスします。
すぐ近くには聖徳太子開基の法楽寺が佇みます。
興福寺五重塔と東金堂。
県立美術館の帰り際に、興福寺境内を通りました。
国宝館の展示品に、あろうことか油のような液体が掛けられたようですね。被害に遭った展示品が元通りになることを願うばかりですが、こういう犯罪は許せませんよね。橿原神宮の境内でも同じような被害が確認されています。
奈良県立美術館の入館料は大人400円となっています。1階ギャラリーのみの見学であれば、観覧無料で楽しむことができます。
今週末で終わってしまう禅(ZEN)の企画展!まだの方は奈良県立美術館に足を運んでみましょう。