春先に訪れた石舞台古墳。
いつもとは違う光景にカメラのシャッターを切ります。なんと紫色の花が咲いているではありませんか。いつからこの場所に紫色の花が咲くようになったのでしょう。そう言えば昨年は、一度も石舞台古墳を訪れることがなかったのかもしれません。
花の名前は紫花菜(むらさきはなな)。
石舞台古墳脇の花壇に咲くムラサキハナナ。
毎年春先になると、この場所には黄色い菜の花が咲きます。石舞台古墳周辺の桜と菜の花の競演はつとに有名ですが、そこに新たに紫色の花が加わっています。可憐な蝶が舞っているような艶やかさです。
中国原産のアブラナ科の花(オオアラセイトウ)
紫花菜(ムラサキハナナ)なんてちょっと言いにくい名前の花ですが、その他にも様々な呼び名があるようです。
大紫羅欄花(オオアラセイトウ)、諸葛菜(ショカツサイ)、紫金草(シキンソウ)などの別名があります。
諸葛菜(しょかつさい)とは諸葛孔明に因んだ名前とされます。諸葛孔明が大軍を率いて野営する際に、ムラサキハナナの種子を用意したと伝わります。種子からは油を採取することもでき、その若葉は食用にもなったようです。諸葛孔明が広めたとの話も伝わる伝説の越年草、それがムラサキハナナです。
ムラサキハナナの群生の向こうに石舞台古墳を望みます。
紫とは群れて咲くことに由来しています。古代より高貴な色とされてきた紫色ですが、古代史にその名を刻む石舞台古墳にもお似合いの配色ではないでしょうか。群れて咲くから紫、そのことをよく表している花の一つなのかもしれません。
ムラサキハナナより一段下の花壇に咲く菜の花。
強風のためなのか、哀れにも菜の花が倒れてしまっています。花壇の合間には通路が設けられており、花見客は間近に花を楽しむことができます。菜の花特有の香りが辺り一面に立ち込め、春爛漫の飛鳥を満喫します。
石舞台古墳の無料駐車場に車を停め、徒歩で石舞台古墳へと向かいます。
道路沿いにはまだ桜も咲いており、数多くの観光客で賑わっていました。
石舞台古墳の拝観入口。
石舞台古墳の入場時間は8時30分~17時です。今回は中には入らず、道路を挟んだ向かい側の菜の花畑へと足を向けます。
ムラサキハナナと菜の花の境目。
いや~綺麗ですね。
花壇の傍には木製のベンチも置かれています。
ここに腰掛けて、蘇我馬子の墓ではないかと言われる石舞台古墳を眺めます。
昭和初期の頃の写真を見ると、この巨大な石の上に腰掛けて記念写真に収まる人もいたようです。もちろん、今は古墳の巨石の上に乗るなんてご法度です。昭和27(1952)年に国の特別史跡に指定され、その偉容を今に伝えています。
石舞台古墳には墳丘の盛り土がありません。剥き出しになった横穴式石室が多くの観光客を魅了し続けます。
この風景は予想していました(笑)
菜の花と石舞台古墳は春の定番風景とも言えます。
そこへ加わったムラサキハナナの群生。
花の姿も菜の花によく似ていますね。分類上も同じアブラナ科に属し、菜の花の紫色バージョンと言ってもいいのではないでしょうか。
ソメイヨシノは既に咲き終わっていますが、季節をずらして新たな花が咲き続けます。
石舞台古墳の露出した石は約30個にも及ぶそうです。
大小様々な石が巧みに組み合わされ、巨大な玄室空間が保たれています。すっかり観光化された横穴式石室ですので、桜井市の赤坂天王山古墳のような神秘体験こそ期待できませんが、石室内での安心感は抜群です。天井石の裏側を仰ぎ見ながら、大きいな~と感嘆の声を漏らします。
お見事!
その合間から顔を覗かせる石舞台古墳。この場所からの風景を計算に入れているような気がしてなりません。
来年も再来年も咲き続けるであろうムラサキハナナ。
石舞台古墳を彩る新たな脇役の登場ですね。
ムラサキハナナの花言葉は「知恵の泉」なんだそうです。中国兵法の知恵者・諸葛孔明に因む花言葉なのかもしれません。ブルー系統の色には知的なものを感じます。泉のごとく湧出する花びらを見ていると、どこか孔明のインテリジェンスが感じられるような気がして参ります。