矢田丘陵の一角にある松尾寺。
奈良学園の生徒たちと行き交いながら、山の中へと入って行きます。
千手千眼観音菩薩を御本尊とする松尾寺は真言宗のお寺です。カサブランカや薔薇の花咲く寺院としても知られます。
松尾寺の山門。
この山門をくぐると、108段の石段が待ち構えていました。
舎人親王が『日本書紀』編纂の際、ちょうど42歳の厄年だったようです。そこで、厄除と事業の完成を祈願して建立したお寺が松尾寺だったと伝わります。
三重塔に松尾山神社!霊泉「松尾水」も見所
山深い場所にある松尾寺。
境内には各種回向の行われる阿弥陀堂をはじめ、重文の木造大黒天立像を祀る七福神堂、後水尾天皇の持仏であった如意輪観世音菩薩が祀られる三重塔、松尾大明神・清滝権現・牛頭天王の三社を祭祀する松尾山神社などが見られます。
松尾寺の三重塔。
美しいフォルムを描く三重塔です。
明治期の再建説もありますが、鬼瓦に正徳三年(1713)の銘があり、旧材も一部に再利用されているようです。
山門を抜けて参道の石段を上がって行くと、やがて右手に朱色の閼伽井屋が見えて参ります。
お寺や神社から湧き出る水は、清らかなイメージと重なってそれだけで有り難いものです。大和郡山市の松尾寺にも、「松尾寺霊泉」と呼ばれる湧き水がありました。
松尾寺霊泉。
参道の石段途中、その右手にありました。
厄除観音様にお供えする「閼伽水」として、
また、千余年の昔より醸造に適した水として知られ、不老長寿のお香水とも言われます。
「やまとの水」に選ばれた名水です。
余談にはなりますが、赤井さんという苗字の方が日本にも少なからずいらっしゃいます。
赤井さんの苗字の由来は、赤い井戸ではなく、清らかな水を意味する「閼伽井」にあります。ちょうど松尾寺の霊泉のように、清らかな水が湧き出ている所の近くに住んでいた赤井さん・・・そんな情景が思い浮かべられます。
やまとの水に選定された松尾寺霊泉。
清めやお祓いの意味を込めた霊泉であると共に、周辺の人々の生活に密着した生活用水でもあったのでしょうか。奈良に住まう人々と共に有り続ける「やまとの水」。
松尾寺三重塔。
ここは奈良の中心観光エリアである奈良公園から南西方向の矢田丘陵・・・その懐に抱かれるように松尾寺は佇みます。
松尾寺の手水舎。
やっぱり龍はお寺に似合いますね。如意宝珠らしきタマをわしづかみにしています。迫力満点!
松尾山神社。
松尾寺の三重塔からさらに上手へ登って行くと、松尾山神社の鳥居が見えて参ります。
松尾山神社の案内板。
松尾寺に参拝することを、松尾山詣り(まつのおさんまいり)と言うようです。
まさしくここは山の中、舎人親王が松尾山で修行した折、瑞雲たなびき千手千眼観音菩薩が降臨したという逸話にも納得ですね。
養老年間鎮守として勧請された松尾大明神を祀る松尾山神社。
神仏習合の古刹であることが伺えます。
あちこちで見られる風景ですが、お寺の中の神社も趣があっていいものです。
本尊の木造千手千眼観音立像(室町時代)は秘仏です。
「厄除観音」の名で広く信奉を集める仏像ですが、本堂に於いて11月3日に特別開扉されることを知る人は多くないはず。またとない機会ですから、是非お見逃しなく。拝観料も300円と、そう高くはないのが嬉しいですね。