飛鳥の甘樫丘の麓に甘樫坐(あまかしにいます)神社があります。
古代の裁判方法で知られる盟神探湯の行われた社です。
神に盟(ちか)い、湯を探る・・・煮えたぎる湯の中に手を入れて、その手がただれるか否かで正邪を判定した古代の裁判。
裁判員制度が話題になっている昨今ですが、今から考えれば実に恐ろしい裁判方法ですよね。
立石の前で行われる盟神探湯神事
歴史ある盟神探湯神事は、境内にある立石の前で行われます。
世に言う豊浦の立石ですね。
注連縄の張られた立石の前で、厳かに催される盟神探湯神事。
毎年4月の第1日曜日、午後2時から伝統行事の盟神探湯神事が執り行われます。
熱湯に手を突っ込むわけにもいきませんので、笹の葉が神事に使われています。
笹の葉の色が変わらなければOK(潔白)となります。
盟神探湯の歴史を辿っていくと、どうも神奈備との関連性が伺えます。
飛鳥の神奈備は、ご存知のように甘樫丘です。
神様が鎮まる場所として、古代から崇拝の対象にもなっていました。
飛鳥の神奈備が甘樫丘なら、三輪の神奈備は三輪山です。
「応神紀」に以下の記述がありますので、ここに抜粋させて頂きます。
武内の宿禰と甘美内の宿禰と共に、磯城の川のほとりに出でて探湯せしに、武内の宿禰勝ちぬ。
磯城の川とは、三輪川(初瀬川)のことです。
三輪山の麓でも盟神探湯が行われていたようです。
神の前で公明正大な裁判を行う。
神の前で身の潔白を証明する。
神に誓って私は白だ・・・そんな感じで盟神探湯は行われていたのでしょうか。
飛鳥には数多くの謎の石造物が存在しますが、甘樫坐神社の立石も実に神秘的です。
祝戸地区にあるマラ石も一種の立石だと思われますが、この他にも岡、立部、小原、上居などにも立石が存在します。
石舞台古墳もそうですが、やっぱり大きな石には存在感があります。
神様の依代(よりしろ)としての立石。
大きな立石を前にして行われる盟神探湯神事には、それなりの信憑性もあるものと思われます。