奈良市の不空院を訪れました(2013年7月)。
奈良の高畑界隈は閑静なエリアとして知られます。
新薬師寺、志賀直哉旧居、白毫寺などの観光名所が連なり、東大寺や興福寺から足を伸ばしてくる観光客も数多く見られます。春日大社の二の鳥居から下の禰宜道(ささやきの小径)を抜け、志賀直哉旧居を経由して一路新薬師寺へと向かいます。その途中の左手に真言律宗のお寺・不空院が佇みます。
不空院本堂。
不空院の住所は奈良市高畑福井町1365番地。福井町という地名からか、福井の大師という別称も持ち合わせます。
不空院の本尊!鎌倉時代の重文・不空羂索観音坐像
山号は春日山(しゅんにちざん)で、女人救済の寺としてその名を歴史に刻みます。
本堂向って左手に朱色の鳥居が建っています。
「えんむすびさん えんきりさん」と書かれた幟が風に揺らめきます。
縁結びにまつわる神社仏閣は数あれど、縁切りにご利益のある寺社は珍しいためか、ふと目に止まったのでした。縁切りでまず思い出すのが、京都の安井金毘羅宮です。安井の金毘羅さんでも、縁切りと縁結びの碑が一緒になっていましたが、ここ不空院の祠も仲良く横に並んでいました。
この道を真っすぐ南へ進んで行けば、多数の国宝が鎮まる新薬師寺へアクセスします。
白毫寺を経由して山の辺の道へも通じており、古道散策に立ち寄るお寺としてもおすすめですね。
こちらが不空院の山門です。
不空とは「空しからず」を意味しています。
鎌倉時代の重文・不空羂索観音坐像をご本尊とし、あらゆる願い事をすくい取ろうとするそのご利益の確かさ故に、「空しからず」とされているのではないでしょうか。
興福寺南円堂の不空羂索観音も額に第三の目をお持ちでいらっしゃいましたが、不空院のご本尊にも第三の目が存在します。
縁結びさんとは随分親しみを込めた呼び方ですよね。
二つ並んだ祠の左側に、どうやら縁結びの神様が祀られているようです。美人の誉れが高い市杵姫大神、それに黒竜大神が縁結びのご利益に一役買っています。
鳥居の下に陣取るこの生物は一体何を表しているのでしょうか(笑)
随分お腹が大きいですね。
縁結びの市杵姫大神と黒竜大神、そして縁切りの法竜大善神の間に何やら狸のような姿をした神様がお立ちになられています。
不幸で弱い立場の女性を守ってきた不空院。
不空院にはあの鑑真和上もお住まいになられたことがあると伝えられます。
不空院本堂。
平安時代に弘法大師空海はこの場所に、興福寺南円堂のひな形として八角円堂を建立しました。その後、安政の大地震で八角円堂は倒壊し、その礎石の上に現在の本堂が建てられています。
長い歴史の中で駆け込み寺的な役割を担ってきた不空院。
新薬師寺参拝の際には、是非一度お立ち寄りになられることをおすすめ致します。