『古都祝奈良』のならまちアートプロジェクト。
奈良町エリアの計7箇所において美術部門の作品が展示されています。
東大寺、春日大社といった有名寺社でのアートプロジェクトに比べれば規模は小さいですが、どれも見所に溢れていておすすめです。
北風呂町の倉庫。
東城戸町(ひがしじょうどちょう)会所の大国主命神社で不思議な扇風機アートを見学した後、やすらぎの道を経由して北風呂町(きたふろちょう)の倉庫へと向かいます。古びた廃墟が見事なアート作品として蘇っていました。いいですね、こういう雰囲気。軍艦島ではありませんが、廃墟も立派な観光スポットとして生まれ変わることができるのです。北風呂町の倉庫も、そのことを証明しているような気がします。
染物屋の倉庫が呼び覚ます土の記憶
北風呂町の倉庫は、かつて染物屋の倉庫として使われていました。
大正時代から昭和半ばまで続いた染物屋の倉庫に、現代アートが見事に融合して不思議な空間を生み出していました。
やすらぎの道から東へ入り、しばらく進むと北風呂町の倉庫を案内する看板が出ていました。
道路から左手奥へ入って行くと、蔦の絡まる倉庫が見えて参りました。
どうやらあれが、今は廃墟となった倉庫のようです。
壁の全面を蔦で覆われています。
入口が開いていて、受付にはスタッフの方が一人常駐なさっていました。
倉庫の内側から壁を撮影。
風通しを良くするために隙間が設けられています。
染めた反物や糸を乾かすために、常に風が通るように設計されているようです。なるほど、合理的な造りなのですね。
天井にはアート作品が!
実はこのアート、倉庫内の地面の模様をそっくりそのまま写し取って作られています。
一番分かりやすいのが、長方形に白く抜き取られた箇所ですね。
その長方形の正体はコレです(笑)
長方形の箱の上には、未開封のまま残されていたというガラス瓶が置かれています。古都祝奈良のコンセプトブックには、” この場所の地面が見上げてきた記憶の物語を描くインスタレーション作品 ” と解説されています。
かつて染物屋の倉庫だったということで、その地面の土は深い藍色に染まっています。
歴史を物語る地面。
今、天井に吊るされている布は、この地面の反映でもあります。
ここで働いていた人たちの汗も染み込んでいることでしょう。積み重ねた歳月が何かを語りかけてくるようです。
アーティストの名前は宮永愛子さん。
国立国際美術館などで個展を開かれたこともある芸術家です。
北風呂町の倉庫の作品名は「雫 ━ story of the droplets」です・・・そこに身を置いてみて初めて感じる何かがあります。空間や場所と有機的につながるアート作品に触れると、こじつけではない心地良さを感じます。
今回は時間の関係もあって、ならまちアートプロジェクトを網羅することはできませんでした。
そんな中でも大国主命神社の「地風」、鎮宅霊符神社の「ボタン/雨」、奈良オリエント館の「かがり火の蔵」のアート作品は拝見致しました。陰陽師ゆかりの鎮宅霊符神社に展示されていたボタンアートは特に印象に残っています。
その他、奈良町にぎわいの家の「FLOW」、公納堂町(くのどうちょう)の路地奥の「人間の家」、今西家書院の「言ノ葉は、光と影を抱く」などがラインナップされています。アートの祭典『古都祝奈良』の開催期間は10月23日(日)までです。芸術の秋に触れるべく、是非皆さんも奈良へ足を運んでみましょう!