人々を魅了してやまない仏像。
秋篠寺の伎芸天像が好き、という仏像ファンの方も多いでしょう。
秋篠寺本堂。
旧講堂を改修したと伝わる鎌倉時代の建物です。
この本堂の中に伎芸天像が祀られています。
女性的魅力を解き放つ音声菩薩?
秋篠寺は平城宮跡の北西方向にあります。
奈良観光の中心エリアである東大寺や奈良公園とは少し離れています。そのためか、お寺の周辺は静かで自然と心が落ち着きます。
本堂向かって左側に入口がありました。
参拝客はここから薄暗い本堂の中に入ります。
伎芸天像。
入口から一番手前~左側の高い壇上に伎芸天像は首を傾げてお立ちになられています。
インドの最高神であり、舞踏の神でもあるシヴァ神の髪際から生まれたと伝えられます。伎芸を司る女神というわけですね。
南門を入ったエリアに広がる苔。
秋篠寺の名物にもなっている苔は、外界の喧騒を忘れさせてくれる静寂の海を思わせます。
波打つ苔・・・。
秋篠寺の燈籠。
鹿が浮き彫りにされていますね。
伎芸天という名前は、実は明治時代以降に付けられたそうです。秋篠寺の代名詞にもなっているこの仏像の本当の名前は不明のままです。
一説によれば、「西大寺資財流記帳」に記される音声菩薩のようなものではないかと伝えられます。音声菩薩とは、阿弥陀来迎図の楽を奏し、舞い踊りながら口を開いて歌う菩薩のことを意味します。
伎芸天像の微かに開けた口から、たおやかな歌声が聞こえてきそうな気配がします。
奈良時代に作られた伎芸天像ですが、鎌倉時代に修理が施されています。独特の首を傾げたポーズは、鎌倉時代の修理時に、仏師のひらめきによって生まれたものではないかと云われています。
作られた当初の伎芸天像は、真っすぐな首をしておられた・・・ちょっとした歴史のミステリーですね。
仏像の首にある三道と呼ばれる三つの筋から、そのことが類推されるようです。
奈良には女性的魅力に満ち溢れた仏像が幾つか存在します。
中宮寺の菩薩半跏像、法華寺の十一面観音立像、聖林寺の十一面観音立像などは大変人気の高い仏像として知られますが、ここ秋篠寺の伎芸天立像もその一翼を担うに足る存在ではないでしょうか。