栄山寺の国宝八角円堂。
天平時代の遺構として知られますが、八角堂内陣には極彩色壁画が残されています。一部消え消えではありますが、悠久の歴史を伝える見事な装飾画です。入山料の500円とは別に、特別拝観料の400円を納めて見学してきました。
八角円堂内陣に描かれる音声菩薩。
特別拝観記念として絵葉書を頂きます。縦笛らしき楽器を口にする菩薩像が、辛うじて残っていました。
飛貫にも描かれる装飾画!飛天や奏楽神仙の仏画
八角円堂の中に入って天井を見上げます。
古色蒼然とした板絵著色の仏画が出迎えてくれました!
まずはその内陣構造に魅入ります。まるで空飛ぶ絨毯のような格天井が、横架材(おうかざい)の飛貫(ひぬき)によって支えられています。四本の柱や格天井の枠内のみならず、角材の飛貫にも極彩色の装飾画が施されています。飛貫の絵を見ていると、まるで入れ墨のような錯覚を覚えました。妖しくも美しい装飾画に見とれてしまいます。
国宝八角円堂。
藤原南家仲麻呂が、父母追善供養のために建立しました。
内陣周囲には、八角柱が4本建ちます。四方に板扉が開き、連子窓が囲います。屋根上の宝珠は復元品のようです。建立当初の石造宝珠残欠は塔堂内に保存されていました。
本堂奥に資料館のような場所がありました。
音声菩薩が展示されていますね。お顔のアップもあり、細部までよく観察することができます。
八角円堂の左隣には神社が鎮まります。
案内によれば、小島町御霊神社と言うようです。
ウナギの寝床のような資料展示スペース。
実際のところ、八角円堂内陣でよく判別出来なかった装飾画もここに来れば再確認できます。
極彩色の飛天や菩薩、人鳥が天蓋や柱に描かれています。
格天井の各々の升目にも、鮮やかな蓮華が見られました。所々に全く何も描かれていない升目があったので、拝観受付の方にお伺いしました。すると、どうやら雨漏りで消えてしまったようです。
八角円堂の模型。
興福寺の北円堂(八角円堂)も、確か藤原氏にまつわる建造物でしたよね。藤原氏一族の勢力を、ここ五條の地でも感じることになりました。
後世まで残したい宝です。
そのためにはやはり、非公開が原則だと思います。
ひっそりと吉野川の畔で息をひそめていて欲しい。
言わずもがなですが、今も残る天平時代の壁画は貴重です。
栄山寺にアクセスする際、手前の宇智川の畔に磨崖碑がありました。
国史跡の磨崖碑で、大般涅槃経と仏像が陰刻されています。宝亀年間の銘もあり、栄山寺との関連が指摘されます。僧侶の修行場だったのではないかと言われています。
絵葉書では明瞭に写りますね。
ところが、八角円堂内陣ではなかなか見つけられませんでした(笑)
八角円堂の宝珠。
橋の欄干にも見られる擬宝珠と重なります。如意宝珠・・・意のままに願い事を叶えて下さる象徴でしょうか。
固く閉ざされた八角円堂の扉が開きます。
夜間に浮かび上がるお姿は圧巻ですね。
建立当初の宝珠残欠でしょう。
今も大切に保管されています。
八角円堂の構造が案内されています。
外観は平面八角形であるが、内部の身舎(もや)は四角形であり、須弥壇周囲に立つ四本の八角柱が構造上の要となっている。本尊は阿弥陀如来である。
栄山寺には2体の御本尊がいらっしゃるようです。
八角円堂の阿弥陀如来と、本堂の薬師如来。それだけ八角円堂に価値があるという証なのかもしれません。
八角円堂の屋根を下から見上げます。
重層に迫り出していますね。
八角円堂の土台部分。
この地域特有の石材が使われている、そんな気がしてなりません。
この石材の表面を見ていると、吉野川流域を感じます。
天平の薫風を運ぶ八角円堂。
栄山寺を代表する建築物であり、五條市が誇る国宝の一つです。