五條市に佇む榮山寺の御本尊。
重要文化財の木造薬師如来坐像ですが、印を結ぶ手に注目です。
薬師如来には珍しく、禅定印(ぜんじょういん)を結んでいらっしゃいます。禅定印は深い瞑想に入るお姿で、釈迦如来や胎蔵界の大日如来に見られます。通常薬師如来は、右手で怖れを取り除く施無畏印、左手には薬壺(やっこ)を持つのが定番です。
榮山寺の薬師如来坐像。
禅定印に薬壺を載せておられます。穏やかでお優しい表情ですね。
本堂奥に資料館のようなスペースがあり、国宝の八角円堂模型などが展示されていました。
榮山寺の秘仏特別開帳!藤原武智麻呂創建の名刹
栄山寺の薬師如来は秘仏です。
特別開帳の時期のみ公開されています。今回、私は春季特別開帳に足を運びました。
薬師如来坐像が安置される本堂。
本堂前に建つ石燈籠も重要文化財に指定されています。弘安7年(1284)銘の石燈籠で、当初の姿を残し「榮山寺形」と言われます。
さらに引いてくると、石号標と卒塔婆のようなものが建っていました。
創建者の武智麻呂は、天平9年(737)に疫病で亡くなっています。一旦は奈良市内の佐保山に葬られますが、栄山寺裏山の山頂付近に改葬されました。その子に当たる仲麻呂が、山下の寺域に八角堂を建立し菩提を弔ったと言います。
栄山寺の案内札。
栄山寺は古く栄山寺又は、前山寺(さきやまでら)と呼ばれ、藤原鎌足の孫武智麿が養老3年(719)に建立したと伝えられている。境内には国宝八角円堂・梵鐘および重要文化財の石燈籠、石塔婆が残っている。又、栄山寺行宮跡というのは、南朝の後村上 長慶 後亀山三帝の行在所であったからである。
栄山寺境内は、南朝第3代の長慶天皇が行宮を構えた場所とされ、国史跡となっています。
初夏の境内は緑も濃く、清々しい気に満ちていました。
そろそろ紫陽花も咲く頃ですね。
栄山寺の御本尊を拝んでいると、すーっと力の抜けていく感覚があります。
それだけ穏やかで、肩に力が入っていないのでしょう。禅定印に因るところもあるかもしれませんね。瞑想するお薬師さんとの対面は、何物にも代えがたい瞬間です。
清楚で美しい天平時代の八角円堂
藤原不比等の長男・藤原武智麻呂が氏寺として創建。八角円堂(国宝)内陣の柱や天蓋には、天平時代の壁画(重文)【極彩色の仏画】が施され、天平建築の中でも法隆寺夢殿と並ぶ貴重な遺構となっています。
栄山寺境内を歩いていると、薄っぺらい石材の多いことに気付きます。
石碑や石段、建物の基礎に使われていたりするのですが、吉野川流域で採れる緑泥片岩でしょうか。この地域ならではのものを感じます。
宗派は真言宗豊山派のようです。
桜井市の長谷寺と同じです。
改めて思いますが、きらびやかなご本尊ですね。
光背のハロー効果も手伝い、神々しいお姿に自然と手を合わせます。
禅定印に薬壺という、特徴的なスタイルで魅了する薬師如来様でした。