古語の世界には「さやけし」という言葉があります。
さやけしとはどういう意味を持つ言葉なのでしょうか。
さやけしを漢字に当てると、「明けし(さやけし)・清けし(さやけし)」といったニュアンスになります。
つまり、その意味するところは「清明である、すがすがしい」といった感じです。
万葉集の『秋の夜は川しさやけし』
美しい自然を詠った歌も数多く見られる万葉集。
そこで、万葉集の中の「さやけし」に焦点を当ててみることにしましょう。
春の日は山し見がほし、秋の夜は川しさやけし
秋の夜の川は清々しいと詠っています。
現代に置き換えてみても、その情景が浮かんでくるような気がします。暑い夏を終えて迎える秋の夜は格別ですよね。
長閑な明日香村の風景。
この歌にある「し」は副助詞で、その文節を強調する役割を持ちます。
~こそ、~さえといったニュアンスで山や川を強調しています。
奈良県高市郡明日香村の万葉文化館。
館内の一般展示室には、「さやけしルーム」と呼ばれる場所が設けられています。
古代人たちが体感したであろう自然界の音や雰囲気に身を任せるリラックス空間です。さやけし川のせせらぎに耳を澄ませ、日常の喧騒から解放されます。
飛鳥の奈良県立万葉文化館
明日香村の奈良県立万葉文化館を訪れて参りました。万葉文化館では平成13年の開館以来、「万葉集」に詠まれた歌をモチーフに当代一流の日本画家が制作した万葉日本画が展示されています。そんな万葉文化館の原点とも言える「万葉日本画」全154点が、期間...
ちなみに ”山し見がほし” の「見が欲し(みがほし)」とは見たいという気持ちを表しています。
みがほしとは、何とも魅力的な響きですよね。ちなみに、見たいと思う時に表現する他動詞は「みがほる」となります。
山しみがほし、川しさやけし。
古代の言葉の響きに耳を澄ませば、日本人の心が蘇って来るような気がします。
さやけしで思い出すのが、現代の女性の名前によく見られる「さやか」ではないでしょうか。
さやかにも、明るくはっきりとした様子が感じ取れます。現代女性のさやかさんの名前の由来は、「川しさやけし」から来ているのかもしれませんね(^.^)