とろりとした牛肉の歯触り。
長時間煮込んだ ”赤ワイン煮込み” の真骨頂ですよね。
牛腿(もも)のブロック肉が入荷し、久しぶりに作ってみることにしました。3時間ほどコトコト煮込みながら、少しずつ仕上げていく工程は家庭料理の名残を感じさせます。
和牛肉の赤ワイン煮込み。
牛肉と一緒に漬け込んだ香味野菜がほどよくソースに馴染み、得も言われぬ美味しさを醸します。
とろ火でコトコト煮るmijoter !時間が作り出す旨味
とろ火でゆっくり煮ることを、フランス語でミジョテ(mijoter)と言います。
最初の内はまだ硬さの残っていた肉も、ゆっくり時間を掛ければ解(ほど)けるように柔らかくなります。料理のプロセスの中で特に手を加えているわけでもなく、ただただ弱火で火を加え続けます。
一晩赤ワインに漬け込んだ食材。
玉葱、セロリ、人参の香味野菜を柱に、主材料の肉をじっくりと漬け込みます。
赤ワインに漬け込んだ牛肉は、一旦ざるに取って水分を切ります。
赤ワインにはアクがたくさん含まれていますので、火にかけて浮いてきたアクを取ります。再び材料と合わせて火にかけるのですが、その後もアクが出てきます。こまめに取り除きながら、旨味を凝縮していきます。
赤ワインに漬け込んだ食材。
赤ワインの色に染まっているのが分かりますね。
もう少し分厚く切っても良かったかもしれません。
3時間強煮込みましたが、この厚さの肉でもほどけるように柔らかくなりました。
フライパンで肉の表面を焼いたら、今度はみじん切りの香味野菜を焼き付けます。赤ワインを含んでいますので、最初の内はシャバシャバしていますが、次第に水分が抜けて ”焼く状態” になります。焼いた肉と野菜は赤ワインに戻し入れ、煮込みの工程へと移ります。
火加減はとろ火です。
いわゆるミジョテの状態を保ちながら、煮込み続けます。
ある程度アクを掬い取ったら、たんぱく質を分解する梨のすりおろしを加えてみましょう。梨が手元に無い時は、キーウィやリンゴでもいいと思います。
時折アクを除きながら、台所の他の作業にも精を出します。
仕事を進めながら、様々な食材の切れ端が出てきたのでそれらを投入していきます。トマトや牛蒡、柚子皮、ローリエなども加えながら味に深みを出します。
3時間強煮続けたら、スプーンで味見をします。少しコクが欲しいなと思ったので、古代醤やバターを加えて最終調整しました。
赤カブラの鯖寿司。
冬に甘味を増す蕪を使ってみました。
とろけるように柔らかい肉。
「ミジョテ」の為せる業ですね。
時間が作った料理と言ってもいいでしょう。もう少し時間に余裕があれば、4時間でも5時間でも煮続けてみるのも一興です。