市場に春野菜が出回るシーズンとなって参りました。
宴会予約のお客様を控え、産直市場で祝雷とアスパラ菜を購入して来ました。ごろんとした格好の祝雷は以前にも試してみたことがあったのですが、アスパラ菜は今回が初めてです。
左が祝雷、右がアスパラ菜。
2月14日のバレンタイン、3月3日の雛祭り、3月5日の啓蟄と続き、暦は一歩一歩確実に春へと近づいています。当館の厨房でも、春野菜が大活躍する季節の到来です。
祝雷の発色とアスパラ菜の甘味
野菜にはそれぞれ持ち味があります。
その野菜が持っている特徴を考えてみることは、料理の際には特に重要になってきます。
祝雷の持ち味は、その部位によって異なります。葉の部分はほろ苦く、茎の部分は甘いのです。そして何より、その色の鮮やかさが際立つ野菜でもあります。
祝雷の柚子マリネ。
柚子の搾り汁とエキストラバージンオリーブオイルでマリネしてみました。
湯通しした祝雷を薄くスライスし、マリネ液に浸します。鮮やかなグリーンが映える一口サラダに仕上がりました。それにしても見事な発色ですよね。
祝雷の脇芽。
主軸の頭にも芽が沢山付いていますね。雷神が背にする太鼓の連なりが頭に浮かんできます(笑) まさしくこの姿形こそが、祝雷の名前の由来になっているのかもしれません。
春のカミナリ!
こうやって見ると、なかなか迫力があります。
ギュッと丸まった形の食材にはパワーが宿ると申します。お母さんのお腹の中で胎児が丸まっているように、そこには計り知れない生命力が満ちています。貝類がパワーフードと称される所以でもあるのですが、蕗の薹や祝雷などの春野菜にも同じような傾向が見られますよね。
濃い緑が印象的なアスパラ菜。
新品種のアスパラ菜は、中国野菜の暑さに強い菜心(さいしん)と、寒さに強い紅菜苔(こうさいたい)を交配して育成されました。見た目は菜の花に似ており、私たちが一般的に口にするアスパラガスとは全く違う品種なんだそうです。
赤紫色をした冬野菜の紅彩苔ですが、アントシアニンの含有量が多いことでも知られます。健康野菜の紅彩苔には独特のヌメリが感じられますが、一方のアスパラ菜は意外とあっさりしています。
アスパラ菜の白和え。
白胡麻、クルミ、木綿豆腐で淡白に仕上げてみました。
食材の水分を切って合わせる白和えという料理は、得てして喉が詰まるような感じを覚えるものです。ここに季節のフルーツを加えれば、もうワンランク上の一品になることでしょう。
アスパラ菜はアブラナ科アブラナ属の野菜ですが、アブラナ科特有の苦味もさほど感じられません。ほのかな甘味に思わず舌が喜びます。
アスパラ菜の花。
こういうのを見ると、春が来たなぁって感じがします。
その歯応えがアスパラガスと似ていることから、アスパラ菜と命名されています。寒冷地では秋に栽培されているからなのか「オータムポエム」という別名もあるようですが、基本的には春野菜として市場に出回ります。
葉の部分が濃い緑で、茎の部分が薄い黄緑色をしています。
祝雷の茎にはブロッコリーのような甘味があります。祝雷のほろ苦い葉には、冬の間眠っていた細胞を呼び覚ます働きがあります。旬のものを食べることによって、私たちは生活のリズムを刻んできました。その時、その土地に合ったものを食すことは身土不二の考え方にも通じます。
春野菜をしっかり食べて、来るべき春に備えましょう!