奈良公園の鹿を形容するなら、tame という形容詞がぴったり当てはまるのではないでしょうか。
英語の tame[teim] は飼い慣らされた、慣れた等を意味する形容詞で、おとなしい野生動物などにも使われます。tame の反意語が wild ですので、比較的イメージしやすい単語だと思われます。
東大寺中門前で休憩する奈良公園の鹿。
毎度のことですが、カメラを近付けても素知らぬふりでそこに座っています。最初は餌でももらえるのかとこちらに興味を示していますが、そうではないと分かると、すぐにいつも通りの平常心を取り戻します(笑) 嫌がる素振りも見せず、ただただ大人しく被写体としてレンズの中に収まります。
風景や物語にも使われる tame
サーカスなどに登場する象は、さしずめ a tame elephant といったところでしょうか。
気性の荒い象では、サーカスの曲芸をこなすことは出来ないでしょう。奈良の冬の風物詩として知られる春日若宮おん祭の時代行列に登場する馬も、比較的おとなしい性格の馬が選ばれていると言います。動物が tame であることは、人との関わり合いの中ではとても重要な要素です。
春日野園地で草を食む鹿の群れ。
背景に東大寺大仏殿が見えて、長閑な奈良の風景が広がります。
こういう素敵な風景とは反対に、平凡な景色のことを tame scenery と表現することもあります。平凡で退屈な、特に何も心に響かないような景色にも tame という形容詞は使われます。あるいは、つまらない物語のことを a tame story と言うこともあります。
東大寺南大門の鹿。
tame であることは、人にとっては都合が良いのだけれども、逆に言えば覇気が感じられないというか、どこかこう煮え切らないニュアンスも含まれているようです。飼い猫を意味する tame cat には、重宝がられるお人好しという意味合いも含まれます。
東大寺二月堂。
二月堂の舞台から眺める風景は格別です。
奈良公園の鹿は人に飼い慣らされているわけではありません。あくまでも野生動物です。病気や怪我の鹿を保護するための鹿苑という施設はありますが、基本的に奈良公園の鹿は野生の中で暮らしています。
東大寺三月堂の鹿。
観光客から鹿せんべいを貰う時にお辞儀をする習性があると言います。普段の生活圏内で観光客と触れ合う機会の多い奈良公園の鹿。tame deer にさらなる拍車が掛かってもおかしくないですよね。