岡寺の鳥居近くに、厄除詣りの宣伝ポスターが貼られていました。
年初には毎年目にする広告ですが、改めて岡寺の御本尊である如意輪観音坐像が岡寺大仏と呼ばれていることに気付きました。日本最古にして、最大の如意輪観音像と言われる仏像です。飛鳥寺の釈迦如来坐像を飛鳥大仏と言い習わしているように、岡寺の場合も「大仏」で通っているのですね。
岡寺の鳥居。
この石鳥居をくぐって、上手にある厄除霊場の岡寺へお参りします。
昨年春に岡寺の石楠花を見に行き、その際にも岡寺大仏にお会いして来ました。如意輪観音にしては珍しい、質実剛健を絵に描いたような巨像だったことを思い出します。大仏という呼称には、何か線引きがあるのでしょうか。東大寺大仏や牛久大仏が大仏と呼ばれるのは分かるのですが、大仏と普通の仏像の境目がはっきりしません・・・まぁ、丈六仏であれば大仏の範疇に入るのでしょう。
初午、二の午、初午大祭と烏頭尾姓の表札
岡寺大仏の御前で護摩法要が営まれるイラスト。
年が改まると頻繁に目にするポスターですね。岡寺の鳥居近くを歩いていると、案の定そのポスターが目に飛び込んで参りました。やっぱり今年も行われるのだなと近づいてみます。
初午大祭は3月8日(水)に執り行われるようです。
午前11時より厄除開運護摩供大般若法要が勤修され、当日の午前8時から午後5時までは随時厄除法要が行われます。今まで知りませんでしたが、正月三ヶ日は入山無料になるんですね。新春やくよけ祈願祭も併せて行われ、境内は賑わうものと思われます。
ポスターの冒頭に、鎌倉時代の歴史書『水鏡』からの引用文が紹介されていました。
つつしむべき年にて、すぎにしきさらぎの初午の日、龍蓋寺へまうで侍り~
厄年に当たる二月初午の日に、岡寺へお参りするとよいと書かれており、当時既に岡寺の厄除詣りが定着していたことがうかがえます。日本最初の厄除霊場と言われる所以ですね。
ちなみに今年の初午は、2月12日(日)に当たるようです。
鳥居下に西国七番霊場の看板が立っています。
岡寺は西国三十三カ所観音霊場の第七番札所にその名を連ねます。
あまり知られていませんが、岡寺大仏は弘法大師空海により造られています。仏法に所縁のあるインド、中国、日本の三国の土を混ぜて造られた塑像です。7,8年前だったと思いますが、岡寺大仏から垂れた結縁の紐に触れたことがあります。岡寺大仏の真横からそのお姿を仰ぎ、結縁の機会を頂く幸運に授かりました。
岡寺の鳥居前を後にして、北へ向かうと万葉集好きの聖地・犬養万葉記念館があります。
黒い妻の見える館が犬養万葉記念館です。
その手前にある細い柱の家には「烏頭尾」という表札が掛かっていました。
犬養万葉記念館は万葉風土学を提唱した犬養孝氏を顕彰する資料館です。以前は有料施設でしたが、今は入場無料になっています。カフェレストランも併設されているようですので、飛鳥散策の休憩場所におすすめです。
犬養万葉記念館の玄関口。
訪れたのは水曜日で、残念ながら休館日でした。
烏頭尾姓の表札。
奈良県立万葉文化館の日本画展示で鑑賞した、あの烏頭尾精先生のご自宅でしょうか?烏頭尾先生は明日香村でお生まれになられています。『とぶとりの』と題する鳥の絵が印象に残っていますが、キトラ古墳の四神の画も描いておられるようです。
国営飛鳥歴史公園の石舞台古墳地区へ向かいます。
お店の前にあった不思議なお人形(笑)
石舞台古墳の西側に広がる「あすか風舞台」。
休日には数多くの家族連れで賑わう場所です。春や秋になれば、お弁当を広げて食べるのも楽しそうですね。
いつもとは違うアングルで石舞台古墳を撮影。
ちなみにこの角度であれば、入場料を払って中に入らなくても大丈夫です。開口部側から見ると、巨石が二段重ねになっているんですね。方墳の石舞台古墳ですが、埋葬施設を覆う封土が失われ、横穴式石室の天井石が剥き出しになっています。
桜の季節になれば綺麗なんでしょう。
ところで、近鉄吉野線の沿線には岡寺駅と飛鳥駅があります。隣り合わせですが、それぞれ別の駅です。
そのため、岡寺と飛鳥はお互いに ”別の場所” というイメージがあります。しかしながら、実際は十分に徒歩圏内です。厄除霊場の岡寺も飛鳥の一部なのです。現に岡寺厄除詣りのポスターにも、「飛鳥」という地名が冠されています。近鉄岡寺駅から岡寺まで歩く方が、むしろ遠いのです。
岡寺は飛鳥観光の一部である。そのことを改めて確認しておきたいと思います。