法華寺の境内で最も歴史ある建物。
赤門の東に移築されているお堂で、その名を横笛堂(よこぶえどう)と言います。
建礼門院の雑仕女(ぞうしめ)として仕えていた横笛が、斎藤時頼(滝口入道)との恋に破れ、剃髪後に尼として居住した場所と伝わります。
法華寺の横笛堂。
境内の南東隅にひっそりと居を構えています。
かつてはここより南の境外にあったとされ、現在は横笛地蔵を祀る地蔵堂が建っています。
張り子の横笛像!手紙の反故を繋ぎ合わせた自作の像
横笛堂は拝観受付の裏に当り、境内でも目立たない場所にあります。
室町時代以前の建物のようで、内部装飾には鎌倉時代の様式も見られます。かつて横笛堂の中には「横笛像」が安置されていましたが、現在は本堂内に移されています。
横笛堂の立札。
気になる横笛像ですが、恋の相手・時頼から横笛宛てに送られた手紙を張り合わせているようです。手紙の反故で自らの姿を作り、後世に残した横笛。手紙の内容はおそらく恋文だったのでしょう。悲恋に終わった滝口入道との仲を清算したくてもし切れない、複雑な女心が垣間見えます。
正面に格子戸、屋根の妻には懸魚が下がります。
反故(ほご)とは、不要になった紙のことです。
コピー用紙の裏側をよく反故紙(ほごがみ)と言ったりします。用済みで不要になったとはいえ、用紙の裏は白紙の状態でまだ使えそうです。裏返して使えば、再利用できる反故紙は大切にしたいですよね。
滝口入道から送られた手紙。
横笛はそれを裏返して使ったのでしょうか。
有効利用と言えばそれまでですが、”忘れてしまいたい過去”だったはずです。その辛い経験からもう一度自分を再生させるために、自らの像を張り合わせたというのでしょうか。
法華寺本堂。
国宝の十一面観音菩薩立像を祀る建物です。この堂内に、横笛像は安置されています。
光明皇后の姿を写した十一面観音も素敵ですが、横笛像のインパクトもなかなかのものです。
法華寺の稲荷神社。
横笛堂の北側に祀られていました。
おそらく稲荷神社の本殿に当たる建物でしょう。
古色蒼然とした雰囲気です。
さらに北側には薬師堂がありました。
西に面して建ち、薬師如来を祀っているようです。
薬師堂の立札。
薬師堂のさらに北側には、重要有形民俗文化財の浴室(からふろ)があります。6月には施浴体験も行わている蒸し風呂で、古代に開かれた福祉施設として知られます。
桃山時代の鐘楼。
末広がりの袴腰(はかまごし)が印象に残ります。鐘楼の向こうには池が広がり、畔には季節の花が咲いていました。