毎年恒例の興福寺特別公開。
2015年度の今年も興福寺から招待券を頂きました。拝観するタイミングを計っていたのですが、公開期間が4月初旬から中旬の観光シーズンに当たっていたため、あいにく時間が取れずじまいでした。忙しい合間を縫って、もうこのタイミングしか無いと思い立ち、小雨の降る中、興福寺中金堂の再建現場を見学して参りました。
槍鉋(やりがんな)のカンナくず。
くるっと巻いていますね。
工事現場に辿り着くと、まずは待機所へと通されます。実際に再建現場を見る前に、待機所で予習をする段取りになっていました。建築部材の表面仕上げを行うために使われた槍鉋(やりがんな)。古代の大工道具で削られた木屑が、実演コーナーに展示されていました。嬉しいことにこのカンナ屑は自由に持ち帰ることができます。木の香りを嗅ぎながら、古代の職人仕事に思いを馳せます。
1日2回実施される30分間の槍鉋実演
興福寺中金堂再建現場において、午前と午後の1日2回、それぞれ30分間の槍鉋実演時間が設けられています。
特別公開のチラシには、10時30分からと、14時30分からと案内されています。私は幸運にも午前の部に居合わせ、槍鉋の実演を目の当たりにすることができました。少し角度を付けて、黙々と木の表面を削る職人さんの姿を見学させて頂き、大変有意義な一日を過ごすことができました。
京都の広隆寺で行われる「釿(ちょうな)始め」の年頭儀式はよく知られるところですが、古来より寺社建築と大工道具には切っても切れない深い関係があります。
傾斜角度30度の急なスロープを上り、再建現場へと足を向けます。
立派な組物が視界に入ります。
古代建築を見ていて思うのですが、その理に敵った造形はまさしくアートそのものです。
興福寺中金堂再建現場を背景に拝観チケットをかざします。
今回の特別公開では、中金堂再建現場の他にも国宝館、東金堂を併せて拝観することができます。拝観料は大人1,500円、中高生1,000円、小学生500円になっているようです。
待機所に展示されていた組物。
中金堂は興福寺にあった3棟の金堂(中金堂、東金堂、西金堂)の中心となるお堂です。過去に7度も火災に見舞われましたが、その度に復興を果たしてきました。江戸時代の1717(享保2)年の焼失以降は再建がかなわなかったのですが、平成に入って見事に復興されることに相成りました。
待機所には興福寺中金堂の模型も展示されていました。
細部に渡って見事に再現された模型です。東大寺大仏殿の中にも、再建された大仏殿の模型が展示されていますが、こういうのを見ていると童心に返ったような気がして参ります。
槍鉋実演コーナー。
興福寺の紋も見られますね。
向こうに見える待ち行列は、VR特設コーナーでバーチャル体験を待つ人々です。ヘッドホンをして、バーチャルリアリティーゴーグルを覗き込み、完成後の中金堂をあらゆる角度から疑似体験します。頭を右に左に回しながら、思い思いにバーチャルリアリティーを楽しみます。
一心に木の表面を削っておられます。
槍鉋で削られた薄い木材はくるっと丸まり、職人さんの足元へと落ちていきます。
この角度なのですね。
刃の部分は柄の長さに比べれば、ほんの少しといった感じです。周りの参拝客には目もくれず、神経を研ぎ澄まして丁寧に仕事が進められます。興福寺中金堂の柱や組物、軒の材料など、外部から見えるところは全て槍鉋によって仕上げられています。
屋根の傾斜が美しいですね。
この角度から見ると、鬼瓦がまるで空を駆ける龍のようにも見えて参ります。さすがに魔除けの鬼瓦、躍動感が感じられます。復元された軒丸瓦や軒平瓦も見応えがあります。
再建現場三階の張り出し口から望む東金堂と五重塔。
まだ建設途中の中金堂であればこそ、目の前の光景が楽しめるというものです。足場が組まれている今でしか味わえない、大変貴重な興福寺の歴史的風景です。
槍鉋の木屑が箱の中にどっさり(笑)
拝観記念にお持ち帰りになられることをおすすめ致します。
なんだかこれだけでもご利益がありそうですよね。