賓頭盧尊者(びんずるそんじゃ)はなぜ赤いのか?
賓頭盧尊者が赤い理由は、酒気帯びによるものだとばかり思っていました。
先日、興福寺の南円堂を訪れた際、撫仏(なでぼとけ)の賓頭盧尊者を撫でさせてもらいました。そこに掲げられていた賓頭盧尊者の案内板を見て、ちょっと意外な事実に気付かされたのです。
物の見方には相反する二面性があります。できれば両方から見て判断した方がいい、そう思わされる新たな発見でした。
興福寺の賓頭盧尊者。
施無畏印と与願印を結び、左手には如意宝珠をお持ちになられています。
興福寺びんずるのお参りの仕方
賓頭盧尊者はお釈迦様の弟子で、釈迦の正法を伝える十六羅漢の一人に数えられます。お釈迦様と約束した禁酒の誓いを破ったことにより、お堂の外陣に追いやられたと伝えられます。お寺を参拝すれば分かることですが、賓頭盧尊者をお堂の内陣で見ることはありません。必ず外にいらっしゃいます。
お酒を飲んでいるから赤いのだ、とばかり思っていました。
香炉に立てられたお線香の煙の向こうに、日本で二番目に高い五重塔を望みます。
賓頭盧尊者が赤い理由は、酒気帯びによるものではなく、修行により精神が充実して生気がみなぎっているからなのです。
なるほど、仏の教えを学ぶ間に魂が浄化されていったのでしょうか。
あの興福寺阿修羅像も、最初は戦いの神であったと言われます。仏の教えに感化されて、あの愁いを帯びた人気の仏像へと変身を遂げます。禁酒に背いたことばかりがクローズアップされて、その後の賓頭盧尊者の行いには光が当たってこなかったのかもしれません。
梵語では、Pindola と言うようです。
賓頭盧尊者のフルネームは、ビンドラ・バラダージャで、姓がバラダージャで名がビンドラ(Pindola)です。
神通力に優れていた賓頭盧尊者。持って生まれた才能というか、天才肌なところがあったのかもしれませんね。
賓頭盧尊者を撫でるには、横に開けられた穴から手を入れます。
両サイドに手を入れるための空間があり、正面にはお賽銭を入れる小さな穴が開いています。箱の中に手を入れる罰ゲームを連想してしまいますが(笑)、中にいらっしゃるのが賓頭盧尊者と分かっていますから安心です。
右手と左手で3回ずつ、優しく頭を撫でると無病が約束されます。
賓頭盧尊者のお参りの仕方は、大体において自分の患っている箇所を撫でるとよいと言いますが、興福寺の賓頭盧尊者の場合は少し異なるようですね。
頭を撫でる。
ここがポイントのようです。
参拝受付の窓口には、来年の干支である平成癸巳の絵馬が販売されていました。
生気がみなぎって紅潮したお顔。
心身の充実により、血行が良くなった証拠なのでしょう。全ての健康の源は、要は血液。血液の循環であり、サラサラの血液があなたの健康を保証してくれます。酒は百薬の長と申します。年末年始を控え、お酒を飲む機会も増えるものと思われますが、少しのお酒で心身の充実を図りたいものですね。