奈良県御所市蛇穴(さらぎ)。
難読地名に頻出する「蛇穴」という地名の謎に迫ります。
野口神社境内の蛇綱。
蛇穴(さらぎ)と言えば野口神社、野口神社と言えば汁かけ祭りと言うぐらいに、毎年5月5日に行われる蛇引き行事は有名です。蛇綱を持って集落を練り歩く野神祭りは、農耕儀礼の一種とされます。祭りの最後に境内の蛇塚に巻き付けられた蛇綱を見ていると、蛇と関わりの深い神社であることがうかがえます。
新参を意味する蛇穴
蛇穴(さらぎ)は「今来(いまき)」を意味しています。
今来(いまき)とは、新たに参上した人(新参)や新たに外国から帰化した人のことを意味します。要するに新参者のことです。野口神社の縁起を見てみると、茨田(まんだ)連が「葛城蛇穴」に移住し、その祖神である神八井耳命(かむやいみみのみこと)を祭祀したとあります。
蛇穴の「さら」は、新しいことを意味する「新(さら)」に通じます。
野口神社から少し離れた所に、蛇穴駐車場と書かれた看板が立っていました。
野口神社自治会管理の駐車場で、無断駐車禁止と案内されています。どうやら区民以外の無断駐車は固く禁じられているようです。
蛇はとぐろを巻き、棲家である穴を作るわけですが、そのこと自体を「サラキ」と言います。土器のことも「サラキ」と言いますが、その制作過程を想像してみれば納得がいきます。蛇がとぐろを巻くようなプロセスを経て作られる土器。底の浅い甕(かめ)のことを浅甕(さらけ)と言いますが、その由来は同じです。
細長い土地に設けられた蛇穴駐車場。
すぐ右手を国道24号線が走っています。
駐車場から振り返ると、蛇穴防災倉庫と書かれていました。
蛇穴区民会館もすぐ近くのようですね。
野口神社の鳥居。
野口神社の御神体は龍とされます。
元来、蛇穴村は玉手、寺田、本馬村など付近農村の水源地でした。この地には、水の神様である龍神信仰が根強く残っています。
野口神社の前に、葛城・蛇穴と題する説明書きがありました。
野口神社参拝の折には、ゆっくりと目を通されてみてはいかがでしょうか。
蛇引き行事の巡行が終わって、拝殿横の蛇塚に納められる蛇綱。
その昔この場所には井戸があって、中に蛇を埋めて土をのせ、今の蛇塚になったと言い伝えられます。昔は蛇塚ではなく、境内の木に蛇綱を掛けたこともあったそうです。
早乙女の活躍する五月は、農作業にとって大変重要な時とされます。
稲作にとって水は大切です。水の神様をいつも以上に身近に感じるシーズンであったと思われます。5月に催される蛇引き神事にも、水を司る神への畏敬の念が感じられるような気が致します。