角刺神社の御神木はL字に曲がっていることで知られます。
なぜこのようにL字型に成長したのか、その理由は定かではありませんが、とても印象に残る御神木ですのでここにご紹介しておきます。
角刺神社の御神木は木の分類から言えば、ブナ科コナラ属のイチイガシです。
イチイガシは暖地に生育する木で、高さ約30メートルにも達する常緑高木です。奈良公園でもよく目にする木ですが、同じ葛城市内に鎮座する笛吹神社のイチイガシ林は天然記念物にも指定されています。イチイガシの葉は先端で急に尖っており、葉や若枝は毛で被われています。大形の実は食用となり、その味はシイに似ています。材質は堅く強靭で、大工土木用具としても重宝されます。
御神木イチイガシの語源
イチイガシの名前の由来はどこから来ているのでしょうか。
イチイガシは最もよく燃える木を意味する「最火樫(いちびがし)」に由来するとする説。あるいは樫の木の中で最も樹高が高くなり、しかも材質が良いことなどから「一位樫」に由来するという説もあり、現時点では諸説紛々としています。いずれにしても、優れた木を表現するためにネーミングされたことだけは間違いないようです。
所々に瘤が見られる角刺神社の御神木。
途中からにょきっと頭をもたげ、見事にL字型に曲がっています。
近鉄忍海駅の駐輪場。
角刺神社は近鉄忍海駅から歩いてすぐの所に鎮座しています。
角刺神社の社号標。
「奉納氏子中」と刻まれた石標も立っています。左手に手水舎や鳥居の姿が見られます。
角刺神社鳥居奥に見えるのが拝殿で、その右横に冒頭の御神木が生えています。
角刺神社の御祭神は飯豊青命(いいとよあおのみこと)です。
兄弟が皇位を譲り合っている間に、この地において執政を行ったと伝えられる女帝です。古事記や日本書紀にはその記述が無いことから、飯豊青命を天皇とする見方には疑問の余地が残りますが、この地がかつての日本を象徴する場所であったことに間違いはないようです。角刺神社の近くには、飯豊青命が眠る飯豊天皇埴口丘陵もあります。
御神木が拝殿の横に寄り添うように伸びています。
左手向こうに見えているのは、角刺神社の社務所でしょうか。
自らの重みに耐えるために石が敷かれています。
やはりこの御神木は人為的に曲げられたのでしょうか。その経緯が気になるところです。
角刺神社のすぐ隣りにある葛城市歴史博物館。
お車で角刺神社にアクセスされる方は、この博物館の駐車場に車を停めることになります。角刺神社には駐車場が完備されていませんので、ご参拝の際には注意が必要です。
御神木の横にはベンチも置かれています。
見事な背筋力(笑) 少々不躾ではありますが、そんなイメージが頭の中に浮かんで参ります。
拝殿前の狛犬と御神木のイチイガシ。
イチイガシのどんぐりには渋味が無いので、アク抜きをする必要がありません。アクが無い清浄な実ということで、御神木の面目躍如といったところでしょうか。
地を這うように伸び、途中から頭をもたげる御神木。
想像の域は超えませんが、自由奔放な昭和初期には、おそらくこの御神木の上に腰掛ける人も多かったのではないでしょうか。
今では陵墓に指定されている箸墓古墳の中にも、昔は近隣住民の近道が通っていたと伝えられます。神の山と仰がれる三輪山にも、子供たちが自由に出入り出来た時代がありました。明日香村の石舞台古墳の上にも、たくさんの人が乗っている写真が残されています。
純真無垢な人々に守られたきた歴史があることを思います。
根っこから真っ直ぐ横に伸びる御神木は、確かにベンチ要らずの休憩所です(笑)