斑鳩町龍田北1丁目にある甲塚古墳。
直径6cmの小型青銅鏡が出土しています。藤ノ木古墳から西へ200mほどの場所です。以前から古墳の伝承がありましたが、奈良大学と斑鳩町教育委員会の発掘調査により“古墳である”ことが判明しました。
民家近くの斜面に築かれた甲塚古墳。
錦ヶ丘住宅地の東端に当たります。高台に位置し、東に目を向けると藤ノ木古墳や法隆寺五重塔が見えています。見晴らしの良い場所に築かれるのは、古墳の常ですね。
三重の同心円を描く重圏文鏡!竪穴式埋葬施設の木棺
甲塚古墳は円墳だと思われますが、墳形は未確定のようです。
これからの調査を待つことになりますが、出土した銅鏡が5世紀のものと判明しています。鏡の裏面に特徴的な模様があり、紐を通す「鈕(ちゅう)」を3つの円が囲んでいました。三重の同心円模様で、重圏文鏡(じゅうけんもんきょう)と称されます。
藤ノ木古墳と法隆寺五重塔。
左向こうにわずかに見えているのが五重塔ですが、その手前の社叢も古墳ではないかと言い伝えられているようです。ご近所を散歩中の方に教えて頂きました。甲塚古墳の周辺には案内板も無く、教えて頂かなければ分かりませんでした。
斑鳩町の観光マップを見れば、子守神社の南東方向と案内されています。
近くを探し回りましたが、それらしきものが見当たりません。道行くご近所の方にお伺いし、事なきを得た次第です。子守神社から一旦住宅街の中に入り、左へ折れると目的の甲塚古墳がありました。
今回は奈良県斑鳩健民運動場の駐車場を利用しました。
桜池の北側にある無料駐車場です。斑鳩中学校が近くにあり、迷うこともないでしょう。駐車場から中学校前を通り、南へ下って行きます。子守神社からさらに南、神社から徒歩2~3分と覚えておきましょう。
この辺りでは有名な藤ノ木古墳。
金銅製馬具や沓が出土し、センセーショナルな話題をさらった6世紀後半の円墳です。
錦ヶ丘の住宅地から東へ抜けると、甲塚の墳丘が姿を現しました。
ロープが張られ、立ち入り禁止になっていますね。
現在は埋め戻されているようです。
甲塚は藤ノ木古墳や法隆寺に先行する歴史遺産です。
被葬者は斑鳩地域の有力者と目され、竪穴式埋葬施設に木棺が納められていたようです。
斑鳩町教育委員会による立入禁止札。
出土した銅鏡には赤色顔料が付着しており、神聖なものとして扱われていたことがうかがえます。
庶民の生活に寄り添います。
古墳の横の坂道は生活道路になっています。
墳丘は既に削平を受けているようです。
甲塚古墳から望む藤ノ木古墳。
西日を受ける藤ノ木の墳丘が照り返します。超一級の副葬品が出土した藤ノ木古墳ですが、藤ノ木古墳築造の際には、もう既にこの場所に甲塚があったことになりますね。
甲塚近くの電柱。
ゴボウヤマ、ニシキガオカと記します。
ゴボウヤマで思い出すのが、竜田御坊山3号墳です。龍田神社の裏山で見つかった古墳で、その横口式石槨が橿原考古学研究所附属博物館の前庭に展示されています。
角度を変えて見る甲塚。
かなりの急斜面です。
甲塚から駐車場への帰り道。
生き生き号のりば「錦ヶ丘」の停留所。時代を反映していますね、高齢者の外出支援事業の一環だと思われます。
古代のお墓が身近にある奈良県・・・等しく死を迎える人。
斑鳩中学校の近くに甲塚古墳があり、斑鳩小学校・幼稚園の近くには斑鳩大塚古墳があります。お年寄りから子供たちへ、世代間でつなぐバトンを古墳にも託したいと思います。