庶民の間に人気があった行基菩薩。
東大寺大仏を造立する際に活躍した人物として知られます。そんな行基を祀るお堂が、大仏殿の東側にあります。周りの俊乗堂や念仏堂に比べれば小さい建物ですが、その前面に張り出した向拝が目を引きます。
向拝がせり出す行基堂。
江戸時代の建築物で、かつては俊乗坊重源上人坐像が安置されていたそうです。堂内には竹林寺の旧像(現在は唐招提寺移安)を模した行基菩薩坐像が祀られています。いつもは固く閉ざされたままの扉ですが、12月16日の良弁忌に訪れると、たくさんの参詣客が行基堂前に集っていました。
階隠(はしかくし)の別名を持つ向拝
寺社建築における向拝(こうはい)とは、仏堂や社殿の屋根中央が前方に張り出した部分のことを言います。
建物入口の階段上に設けられることが多いことから、階隠(はしかくし)とも呼ばれています。参詣者が礼拝する所でもあり、御拝(ごはい)の異名でも知られます。手を合わせる参拝者の頭上に庇が張り出した状態になっており、建物内に入らずに祈りを捧げる場合は雨除けにもなります。
真正面から見るとよく分かりませんね。
向拝を確認するにはやはり、真横か斜めのアングルがいいようです。こうして見ると、行基堂の蟇股や木鼻の意匠も美しいですね。
行基堂の右斜め前には水子地蔵が祀られていました。
靴を脱いでお堂の中に入り、誠に恐れながら行基菩薩坐像と相対しました。何とも言えないですね、こんなに間近に拝ませて頂くとあらゆる言葉が失われます。ただただ、その尊顔を見上げながら時の経つのを忘れてしまいました。
この角度からも、行基堂の張り出した向拝の様子がよく分かります。
向拝を付ける理由は何なのでしょう?向拝の意味を考えると、祀られる側の慈愛のようなものを感じられるのです。あくまでも主観であり間違っているのかもしれませんが、「わざわざお詣りに来てくれてありがとう」と手を差し伸べて下さっているような・・・そんな風にも取れるのです。そっとお守り頂いているような、そんな安心感があります。
向拝に抱かれながら、それぞれの祈りを捧げます。