下之坊のバラモン杉を見学して参りました。
天理市福住町に佇む普光山永照寺(ふこうざんえいしょうじ)。
天平11年(739)に良弁僧正が創建した寺と伝わります。良弁僧正といえば、東大寺二月堂前の良弁杉でも知られる人物ですよね。巷では「下之坊の婆羅門杉」で通っているため、永照寺というお寺のことは初めて知りました。
下之坊の婆羅門杉。
推定樹齢800年の巨木です!
特に向かって右側の杉は枝振りも立派で、エネルギーに満ち溢れています。永照寺は現在、無住寺院となっているために拝観は叶いませんでしたが、巨樹に触れただけでも十分にパワーが注入されるのを感じます。聞きしに勝るパワースポットです。皆さんも是非一度訪れてみて下さい。
七曲り道ハイキングコースを経由して永照寺下之坊にアクセス
名阪国道の福住ICを降りて北へ向かいます。
氷の神様・氷室神社を右手に見ながら、さらに北へと進みます。やがて左に折れる道が見えて参ります。七曲り峠へと続く道に入って行くと、民家の裏手にわずかな駐車スペースがありました。そこに車を停めて、徒歩で下之坊へ向かいます。
永照寺下之坊の本堂。
二本の婆羅門杉の間から見えている建物(本堂)です。
車から降りてしばらく歩くと、七曲り道ハイキングコースを案内する看板が出ていました。
ここを右手に上がって行くようです。
道中には初夏の花が咲いていました。
今回の福住探訪では、氷室神社と並んで是非とも行きたかった場所です。ガイドブックなどでは何度か目にしていましたが、まだ一度もその巨木を見たことはありませんでした。聳え立つ巨樹は、やはり生で見るに尽きます。
程なく下之坊へ至る曲がり角に出ます。
ここを右折して、道なりに上がって行けば永照寺下之坊です。
梵字の刻まれた社号標ですね。
山号の「普光山」が見て取れます。
この場所からもバラモン杉が見えていますね。左手奥に聳え立っているのが、下之坊の婆羅門杉です。
入口付近には、「定」と記された明治時代の掲示板がありました。
石燈籠が無造作に置かれています。
緩やかな坂道を登って行きます。
もうこの辺りまで来れば、はっきりと婆羅門杉を視界にとらえることができます。
最終の直線コースに入ります。
そもそも婆羅門とは、インドのカースト制度の最高位のことを意味しています。
インド四姓中の最高位たる僧侶・司祭階級を指し、専ら祭祀・教法をつかさどり、他の三姓の絶大な尊敬を受けていたそうです。そんな婆羅門の名を冠した杉との出会い・・・胸が高鳴ります。
あっ、アレですね!
写真では何度も拝見したことのある婆羅門杉です。
二本の大木の前に石段が付いていますね。
その手前から、左方向の境内へと続く道も用意されていました。
いや~圧倒されます!
向かって右側の杉は幹周7m、樹高48mにも及びます。少々小ぶりにはなりますが、左側の杉も幹周5m、樹高43mを誇ります。文句なしの巨木ですね。
婆羅門杉の案内板。
推定樹齢800年 幹回り約6・8m
この山門の大きな二本の杉は、当寺御本尊・十一面観音像が聖武天皇と婆羅門僧正の合作と伝えられる寺伝にちなみ、婆羅門杉と呼ばれている。御本尊十一面観音に願い事をして、再びこの婆羅門杉に手を合わせ願い事をするとかなえられると伝えられている。
永照寺下之坊には、一定のお参りの仕方があるようですね。
御本尊の十一面観音に願い事をして、再び婆羅門杉に手を合わせて祈願する。このセット祈願を以て、大願成就のご利益に授かれるといった内容です。しかしながら、その御本尊は秘仏のようです。拝観が叶わない今となっては、片詣りで済ませるしかありませんね。
永照寺不動石仏と境内に流れるスピリチュアルな空気
あまり目立たないのですが、婆羅門杉の右手前にお不動さんが祀られています。
石仏龕の不動明王。
足元を覗き込んでお参りしておきましょう。
永照寺不動石仏。
火焔の光背を背負い、下半身は土に埋まっていました。
福住エリアは石仏の宝庫です。
阿弥陀石仏に十王仏、泥かけ地蔵なども祀られています。福住山田町エリアまで足を延ばせば、布目川添いに岩掛不動を拝むことができます。山田道安作と伝わる線刻の不動明王摩崖仏です。
真下から見上げる婆羅門杉。
その偉容に息を呑みます。
すごい枝振りですね!
まるで生命でも宿っているかのように、隆々としています。
静止しているはずなのに、パッと見では動きが感じられます。
アーチでも描きそうな勢いです。
素晴らしい!
四方に枝が伸び、その暴れぶりに完全にノックアウト・・・ただただ、ポカンと口を開けて見入ります(笑)
下之坊 普光山永照寺(真言宗豊山派)
当寺は天平11年(739)聖武天皇の勅願により良弁僧正の創建と伝えられている。
中世までは上・中・下之坊をはじめ湯屋坊など六坊があった。その後、戦や大火で焼け、今では下之坊一宇を残すのみである。
本尊の十一面観音立像は藤原末期の優美な姿を残す絶品で、昭和32年奈良県文化財に指定された。
本堂は、後の改修はあるものの室町時代の創建と考えられる。
永照寺は聖武天皇の勅願で建立されているようです。
なるほど、下之坊は永照寺のごく一部に過ぎなかったのですね。上之坊、中之坊、湯屋坊なども存在していたようです。下之坊と言うからには、おそらく一番標高の低い場所にあったのでしょう。藤原期の十一面観音、是非一度は拝観してみたいものですね。
境内にはウッドチェアが用意されていました。
手作りの椅子が3つ、ここに座って婆羅門杉を見上げるという構図ですね。二本の婆羅門杉の間を通って境内に入ると、右手には池がありました。
残念ながら水は干上がっていました。
池の真ん中に島、さらにそこには祠が祀られています。弁天さんでしょうか?
本堂向かって右手にも小さなお堂があります。
すぐ背後には山が広がります。
焚火の跡のようなものがありました。
護符でも燃やしていたのでしょうか。
こうやって眺めていると、永照寺に山門が無いのがよく分かります。二本の婆羅門杉が立派にその役目を果たしています。そこらの山門以上に、見事な結界が結ばれています。
うねりながら上昇します。
長い年月の間に形成されたであろう木のうねり。この角度から見ると、二本の大木の違いがよく分かりますね。
そこに立っているだけで、神様仏様の ”氣” のようなものを感じます。
奈良県が誇るスピリチュアルスポット・・・心ゆくまで堪能します。
花も添えて。
これだけ大きいと、あらゆる角度から観たくなります。舐め回すように360度。あらゆるアングルから婆羅門杉を仰ぎます。
石段下から見る婆羅門杉もいいですが、この角度もオススメです。
太い枝が伸びる方は、まるで台杉のようです。
本堂向かって左側から撮影。
建物の横にも出入口が設けられているようです。
室町時代創建と伝わる本堂。
後に改修されているようですが、なかなか歴史のある建物です。
改めてこんな巨木は見たことがありません。
巨木巡りがお好きな方もいらっしゃると思いますが、奈良県内では絶対に外すことのできない場所ですね。
婆羅門杉の袂に祀られる石像。
綺麗な前掛けをしており、地元住民の方々に大切にされていることがうかがえます。
婆羅門杉の根っこ。
これだけの巨樹ですから、地中に張り巡らされた根も相当なものであると思われます。
境内から参道方向に向き直ります。
ここは人里離れた静かな場所で、人っ子一人いませんでした。
ただただ、婆羅門杉と向き合う贅沢な時間が流れます。
石段下の石垣内に、不動石仏が祀られる龕が見えていますね。婆羅門杉に気を取られていると、つい見過ごしてしまいがちな石仏です。
下之坊婆羅門杉の帰り道。
水の張られた水田の脇を通って帰路に就きます。
掲示板と石燈籠のあった場所まで戻り、そのまま七曲り道ハイキングコースを辿ってみます。
坂道をゆっくり上がって行くと、七曲峠の道標が立っていました。
この後、しばらくハイキングコースを歩いてみたのですが、途中で心細くなって引き返しました。あきらめずにそのまま登って行けば、頂上付近に「受け取り地蔵(地蔵菩薩石仏)」が祀られていたようです。石仏が野に祀られる初期のものだそうで、建長5年(1253)鎌倉時代の彫刻とされます。
永照寺下之坊の住所は、奈良県天理市福住町265です。
バラモン杉の偉容に触れてみたい方は、是非一度足を運んでみて下さい。満足すること請け合いです!