毎年恒例の興福寺国宝特別公開。
内覧会用のチケットを興福寺さんから頂いていたのですが、そのタイミングでは出向くことが出来ず、遅ればせながら5月初旬に訪れることとなりました。阿修羅像をはじめとする八部衆像、十大弟子像、金剛力士像、天燈鬼・龍燈鬼像、華原磬(かげんけい)などが一堂に会します!
阿修羅像の立看板。
向こうに見えているのは、東金堂と興福寺五重塔です。
興福寺中金堂再建記念特別展として、興福寺が誇る天平乾漆群像が仮講堂に集います。まさに『興福寺曼荼羅図』を彷彿とさせる贅沢な空間が生まれています。またとない機会ですので、是非皆さんも足を向けてみて下さい。
興福寺仮講堂の仏像曼荼羅、国宝の華原磬も見所!
これだけの仏像が一堂に会すると、感動せずにはいられません。
興福寺は国宝の宝庫ですから、あれも国宝、これも国宝と目の前にずらりと国宝の仏像が展開します。仮講堂の真ん中の中尊には、像高2m超の阿弥陀如来坐像がどっかり腰を下ろしておられました。その左前方に、人気の阿修羅像が配されます。仏像の配列にも注目してみましたが、なかなか興味深いものがありました。
興福寺仮講堂。
2009年度にも同じ場所で国宝阿修羅展が開かれましたが、その際には ”仮金堂” と呼ばれていました。現在は仮講堂のすぐ南側で中金堂の再建工事が進められています。2009年当時はまだ中金堂の姿は見られず、南大門跡側からでもこの建物を見通すことができました。しかし、今は回り込まないと確認ができません。
憂いを帯びた表情の阿修羅像。
造像当初はいかにも阿修羅らしい、厳めしい表情をしていたそうです。造りかえられた阿修羅像の真意はどこにあるのでしょうか。闘いをやめた軍神の深い心を想います。
その手前に、券売所を案内する看板が掛かっていました。
柵沿いに北へ向かうと、仮講堂の入口がありました。
このスロープの先に、特別拝観のチケット売場が控えています。
三角コーンがずらりと並んでいますね!
平日の昼間に訪れたためか、行列待ちに悩まされることもありませんでした。おそらくゴールデンウイーク期間中は混雑していたのではないでしょうか。
テントの先に特別拝観受付が用意されていました。
幸いにも招待券を頂いていたので無料でしたが、通常拝観料(仮講堂、東金堂共通券)は一般大人900円、中高生600円、小学生250円となっています。
拝観時間は9時~17時で、受付は16時45分に終了します。混雑時には入場規制も行われ、大雨等の場合は文化財保護のために公開中止になることもあります。当日は快晴で、久しぶりの阿修羅像との再会に胸をときめかせます。
阿修羅像の普段の展示場所は国宝館です。
耐震工事に着手するため、今は閉館中となっています。2018年1月1日にリニューアルオープンの予定で、少しの間のお引越しといった感じです。あっちもこっちも工事中と、少々せわしない気もしますが長い目で見ないといけませんね。
この九十九折りを回避できただけでもラッキーです。
眼前に天平乾漆群像展が開かれている仮講堂をとらえます。
今回のイベントは前期と後期の二期に分かれています。
前期の開催期間は3/15(水)~6/18(日)までです。前期の日程に合わせられなかった方も、後期の9/15(金)~11/19(日)に訪れれば、天平仏のワンダーランドを満喫することができます。
天平乾漆群像展の共通拝観チケット。
この拝観券で、仮講堂と東金堂を拝観することができます。
お堂の中に入ると、阿修羅像の左手前に五部浄像(ごぶじょうぞう)、その後ろに迦楼羅像(かるらぞう)が配置されていました。八部衆像の中でも特に人気の高い3体ではないでしょうか。
上半身のみの五部浄は象の頭を模った冠を被ります。敬虔な少年像ですが、そのいたいけな姿からか見る者の心を打ちます。蛇を喰らう鳥と伝わる迦楼羅も、その異様な姿からインパクトの強い八部衆として知られます。
仮講堂前から西の方に目をやると、興福寺北円堂が見えました。
無著・世親菩薩像が安置されるお堂ですね。法相宗確立に寄与した兄弟僧で、興福寺を代表する国宝像として知られます。
左手が仮講堂で、右手が工事中の中金堂。
国宝特別公開の入口は、人影の見えている一番向こう(東側)です。
中央の阿弥陀如来像の御前に天燈鬼・龍燈鬼、さらにその御前に華原磬(かげんけい)が配されていました。華原磬って?お恥ずかしながら初めて知る国宝物件でした。
華原磬とは儀式用の楽器で、天平6年(734)創建の西金堂に阿修羅像などと共に置かれた金鼓(こんく)とされます。
前方を見据えて伏す獅子。その背に六角柱を立て、雌と雄の各2匹の龍が柱に尾を巻き付けます。胴の空間に金鼓をかかえて周囲を睨みつけ、その鋳造技術の高さをうかがわせます。
里帰りした山田寺の仏頭@興福寺東金堂
今回の国宝特別公開のもう一つの目玉が山田寺の仏頭です。
悲しい運命を辿った山田寺跡の国宝仏頭ですが、この度、『国宝仏頭 東金堂特別安置』(特別公開)により、かつて本尊として祀られていた仏頭が東金堂に戻られ、日光・月光菩薩と600年ぶりの再会を果たしています。
かつて興福寺衆徒によって、桜井市の山田寺から持ち去られた仏像です。
山田寺の御本尊だった薬師如来坐像。
1411年の火災により、体の部分が焼け落ちてしまったと伝わります。その後、東金堂の御本尊の台座の下に納められ、1937年に再発見されるまで、長い間忘れ去られた存在でした。
御顔の部分はしっかり残っているのかと思いきや、よく見てみると、左耳が欠けているのが分かります。そのためでしょうか、今回の展示でも、お堂の向かって一番右端に配置されていました。欠けた左耳を見えにくくする配慮だったのかもしれません。
興福寺東金堂。
現在の建物は室町時代前期の応永22年(1415)に再建されたものですが、国宝に指定されています。
東金堂の扉。
大きな扉を目にするだけで、その歴史の深さを思わせます。
五重塔の方向を見ます。
四天王像や十二神将像が所狭しと配される東金堂ですが、見所は何といっても維摩居士像と文殊菩薩像ではないでしょうか。写実的な維摩居士像は、仏師・定慶が53日で彫り上げ、幸円という絵師が50日で彩色したと伝わります。
快慶・阿修羅・運慶スタンプラリー。
3ヶ所の仏像展を巡り、全てのスタンプを集めれば抽選で記念品がゲットできる企画です。興福寺の阿修羅展と奈良国立博物館の快慶展は手軽に回れますが、東京国立博物館の運慶展がポイントになりそうですね。
記念品の内容ですが、公式阿修羅フィギュア(3名様)を筆頭に、興福寺精進ふりかけ(20名様)、運慶展・快慶展オリジナルグッズ詰合せ等と発表されています。
東金堂拝観受付の向こうに、耐震工事中の国宝館を望みます。
国宝館のリニューアルオープンが待ち遠しいですね。
それにしても綺麗なお顔をなさっています。
数ある天平仏の中でも、傑作中の傑作だと思われます。頬の膨らみがいい!
東金堂の複雑な組物。
当時の技術の高さをうかがわせますね。
東金堂から興福寺五重塔を望みます。
このアングルからの撮影は、東金堂拝観中にしか実現しません。
子供の書が掲示されていました。
これは書き初めでしょうか?様々な漢字が並んでいるところをみると、全体で一つの文章になっているのかもしれません。残念ながら意味は分かりませんが(笑)
東金堂の鰐口(わにぐち)。
神社であれば鈴ですが、やはりお寺にはこの鰐口がよく似合います。
うん?これは埋め木ですね。
木造建築物を長持ちさせるための知恵を見ることができます。
東金堂の北側軒下。
中国人の団体旅行客の声が聞こえてきます。奈良町界隈を歩いていても、そこかしこで中国語が飛び交っていました。元気があっていいのですが、比較的静かに仏像観賞を楽しむ欧米人との違いを感じてしまいます(笑)
アシュラー人気に火が付いて以降、既に数年の歳月が流れています。
一時のブームかと思っていましたが、すっかり定着した感がありますね。阿修羅像は永遠のアイドルです。そのことを他ならぬ興福寺さんが自覚しておられることでしょう。
新たな国宝館では展示デザインの改善も行われるようです。
照明技術に魅せられたかつての国宝館ですが、今度は展示デザインに工夫が加えられるようです。これは今から楽しみですね。そして、その中心には阿修羅像がいて、さらなる仏像ファンの増加に貢献してくれることでしょう。