高松塚古墳壁画公開!国宝の修理作業室

カビの発生問題から10年の月日が流れた高松塚古墳壁画。

平成29年度の年明けに第20回目の特別公開が行われました。窓ガラス越しに修理作業室が公開されます。見学用通路から解体された石室のパーツを見学する格好になります。修理施設の入口でオペラグラスが手渡され、詳細に細部まで見入ることができました。

高松塚古墳壁画公開

修理作業室公開の小冊子。

解体された石室の壁が並んでいます。
天井からアームが伸びていますが、どうやらバキュームのようなものとご説明頂きました。修理作業中に出た不要物を吸い取ってくれるのでしょう。

石材の表面には、小さな白い袋が所々に置かれています。これは今まさしく修理中の箇所で、壁面になじむように重しをしているとのことでした。なんと、その袋の中には散弾銃の弾が入っているそうです。もちろん、目的は単なる錘(おもり)ですから重量的・サイズ的にも適しているんだと思います。

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西壁女子群像や北壁玄武をガラス越しに見学

高松塚古墳の壁画を見るのは今回が初めてでした。

キトラ古墳の壁画は『四神の館』がオープンした際、目の前で見てきました。数ある古墳の中でも、壁画鑑賞ができるのはキトラと高松塚ぐらいなものでしょう。自然と高まる期待感!

西壁女子群像

国営飛鳥歴史公園館内の立体模型に、西壁女子群像を重ね合わせます。

左側が石材に描かれた西壁女子群像で、右側はその拡大版です。

石室の石材には、二上山の屯鶴峯周辺で採れた凝灰岩が使われているようです。カビ問題で話題になった壁画は、石室内面に塗られた厚さ数ミリメートルの漆喰の上に描かれています。キトラ古墳の壁画は漆喰をはがして修理されましたが、高松塚古墳の壁画はその薄い漆喰を剥がすことが出来なかったようです。そのため、石材ごと修理する運びとなりました。

飛鳥美人の名で親しまれる西壁女子群像。

実は東壁にも女子群像が描かれているのですが、その保存状態からいつも注目されるのは西壁側です。西壁と東壁では、その姿態にも違いがあるようです。石室内西壁の最も北寄り、つまり玄武に隣接する場所に描かれていたのが通称「飛鳥美人像」です。

そこには、個性あふれる4人の女子が描かれています。

それぞれに黄、薄桃、赤、緑の衣を着け、左右思い思いの方を向いています。敢えて頭の位置を不揃いにし、各々4人が少しずつ重なり合います。無理のない自然な奥行きが表現され、全体的に柔らかい雰囲気が醸されます。手には孫の手のような如意や団扇状のものを持ちます。顔や衣の輪郭は柔らかなタッチの墨線で描かれているようです。

高松塚古墳の道案内

駐車場に車を停め、特別公開の場所を探します。

公開場所は仮設の修理施設でした。

国営飛鳥歴史公園館の裏手にある建物で、夏になると蓮の花が咲く庭の近くにあります。高松塚古墳の墳丘や壁画館の方向ではありませんのでお間違いなく。ちなみに道案内通りに歩を進めると、二段築成の円墳・高松塚古墳へとアクセスします。

高松塚古墳

高松塚古墳。

もうこの墳丘は何度も目にしていますので、今回の目的はここではありません。

高松塚古墳壁画公開の受付所

先ほどの道案内から右手奥に目をやると、ありました、ありました!

特別公開の受付所のようです。

白いテントが張られ、その背後に見える建物が国営飛鳥歴史公園セミナールームです。セミナールームが開いているのを初めて見ました。おそらく週末になると、里山自然教室の体験場所として使われているのでしょう。

受付所で手渡された入館証

どうやら私は13班のようです。13時からの見学ということで、国営飛鳥歴史公園館内でしばらく時間を潰します。時間になれば、一旦セミナールームに集合して見学へ出発という流れです。

高松塚古墳壁画の修理施設

こちらが修理施設です。

10分間の見学を終えて、出てきたところで撮影。ちなみに施設内では写真撮影が禁止されています。携帯電話での通話も禁止されていますので、入館前に必ず呼び出し音のスイッチを切っておきましょう。

館内に入ると、計3箇所の見学スペースが設けられていました。

奥行きのある見学通路が一本通っており、手前から北壁玄武、真ん中に西壁白虎・西壁男子群像、そして一番奥に西壁女子群像を見学するガラスが張られていました。さすがにメインとあってか、奥の飛鳥美人像前に見学者が集中します。そこにガイドの方が陣取り、色々と解説なさっていました。

北壁の玄武ですが、色彩は割と鮮やかでした。でも、残念なことに中心部分の亀と蛇の頭が失われています。漆喰ごと剥がれ落ちてしまったようですが、キトラ古墳の玄武と極めて近い姿なんだそうです。

西壁の白虎も、キトラ古墳の白虎を見慣れているせいか、その劣化状態が気になります。とても見えづらいのです。言われてみれば、辛うじてそうと分かる程度でしょうか。西壁の男子群像は女子群像ほどではありませんが、全体の輪郭ははっきりと見て取れます。こちらも4人描かれているようで、左端の男性は折り畳み式の椅子を手にしていました。

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鋳造体験プログラムの海獣葡萄鏡

修理作業室公開の前、時間つぶしで訪れた国営飛鳥歴史公園館。

公開に先立ち30分余りの時間があったので、立ち寄ってみることに致しました。

里山自然教室の木工作品

木工作品の昆虫。

おそらく定期的に催されている里山自然教室の作品だと思われます。

海獣葡萄鏡

館内の入口付近に、錫(すず)で作られた海獣葡萄鏡が置かれていました。

葡萄や神獣のデザインが美しいですね。

海獣葡萄鏡の鏡磨き体験

ここでは鏡磨き体験ができるようです。

文様の裏側は平らな面になっているのですが、そこを磨くそうです。

古代人が使っていた鏡の再現です。

自分の顔を映してみるのですが、ぼんやりとしか確認できません。かなりの想像力が必要です(笑) 「私は美人、俺はハンサム」と思って見れば、その如くに見える鏡と言ってもいいでしょう。権力の象徴か、はたまた魔除けの効果もあったのでしょうか。

海獣葡萄鏡

こんなのが自分で作れるんですね。

鋳造体験プログラムはキトラ古墳壁画体験館でも開催されています。金属を溶かして古代の鏡を作るという、またとない体験プログラムです。小学校3年生以上が対象年齢とのことですので、保護者同伴で参加されてみてはいかがでしょうか。

海獣葡萄鏡の鋳造体験

このテーブルの上で磨くようです。

青い箱の中には液体が入っていました。

ところで、高松塚古墳の副葬品にも海獣葡萄鏡が出土しています。

その他、銀装大刀金具、ガラス玉、琥珀玉なども発見されました。埋葬施設である横口式石槨の内部には漆塗りの木棺が納められていたそうです。横口式石槨の形態や出土遺物から、その築造時期は7世紀後半~8世紀前半と推定されます。

高松塚古墳セミナールーム

セミナールーム。

ここでしばらく待機して、修理作業室の現場へ向かいました。

高松塚古墳壁画修理施設

高松塚古墳の被葬者は謎のままです。

円墳ということで、天皇陵の可能性は低いものと思われます。とは言っても、これだけの古墳に埋葬されているわけですから有力者であることに違いはありません。

平成14年(2002)に判明した壁画の褪色。

それから5年後の平成19年(2007)には、修復を期した石室の解体が行われました。ガイドの方にお伺いしましたが、修理作業にも終わりがあるようです。いつまでも続けられるのかなと思っていたのですが、ある一定の期限を設けて一旦終了するようです。その後の壁画公開方法は模索中とのことでしたが、再び石材を組み直すことはないようです。バラされた状態のままではありますが、これからも古代の息吹を伝え続けてくれることを祈ります。

【高松塚古墳の見学案内】

  • 住所  :奈良県高市郡明日香村平田
  • 古墳形式:円墳
  • 築造時期:7世紀後半~8世紀前半
  • 壁画公開:修理作業室の公開(無料)
  • 駐車場 :国営飛鳥歴史公園館駐車場20台(無料)
  • アクセス:近鉄飛鳥駅徒歩10分
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