橿原市葛本町の安楽寺。
拝観寺院ではありませんが、近松門左衛門の浄瑠璃『冥途の飛脚』に登場する梅川忠兵衛の墓碑所在地として知られます。山門の前は何度も通っているのですが、今回初めて境内に足を踏み入れてみました。
安楽寺本堂。
立派な造りですね。安楽寺のある場所は、奈良県警察運転免許センターのすぐ西側です。国道24号線から少し東へ入った所に山門が建っています。近鉄新ノ口駅からも程近く、教習所へ向かう受講生たちが行き交います。
『冥途の飛脚』のあらすじですが、恋仲になった二人が駆け落ちし、その挙句に捕らえられるというお話になっています。悲恋物語ですね。
大坂の飛脚問屋・亀屋の養子忠兵衛。かねてから入れ込んでいた新町の遊女梅川を身請けする際、公金に手をつけるという罪を犯します。その後、忠兵衛は梅川と共に故郷新口村に逃げ帰りましたが、敢え無く捕らえられて大阪千日前の刑場で処刑されます。梅川は近江矢橋の十王堂で、忠兵衛の菩提を弔いつつ懺悔の日々を50年余りも送ったと伝えられます。
水子供養・交通安全祈願の安楽寺
安楽寺の山号は「至心山」のようです。
山門の扁額に掲げられていました。宗派は浄土宗で、山門前の立看板には「水子供養 交通安全祈願」と案内されていました。すぐ近くに運転免許センターがあり、交通安全のご利益も頷けるところです。
山門入って右手に建つ十三重石塔。
その向こうには墓地が広がっているようです。梅川忠兵衛の墓碑とやらも、その辺りにあるのかもしれません。
安楽寺の山門。
実際にあった事件をモデルにしたという冥途の飛脚。
今も安楽寺境内には、「忠兵エ」「梅かわ」と刻む墓碑が残されています。残念ながら今回は確認不足でした。次回訪れる機会があれば、是非拝ませて頂こうと思います。ちなみに国道をはさんで西側の善福寺にも、梅川忠兵衛の供養碑が建立されています。
安楽寺山門前。
今も語り継がれる新口村の段・・・
奈良の旅籠屋三輪の茶屋、五日三日夜を明かし、二十日あまりに四十両、つかひ果たして二分残る。鐘も霞むや初瀬山、余所に見捨てて親里の新口村に着きたる・・
寺号標に目を移します。
宗祖圓光大師と刻まれています。浄土宗の開祖・法然のことですね。
「五劫思惟阿弥陀如来 御念持仏 感得地」と続きます。五劫思惟阿弥陀如来といえば、あのアフロヘアの仏様ですよね。ここ安楽寺において感得されたということでしょうか。
安楽寺の山号「至心山」。
立派な門構えのお寺があるなぁと思いつつ、いつも通り過ぎていましたが、梅川忠兵衛の墓碑が残されているとは知りませんでした。善福寺もしかりですが、ここ新ノ口エリアは梅川忠兵衛ゆかりの地と言えるでしょう。