黒髪山稲荷神社!奈良阪町に残る龍神信仰

奈良豆比古神社から南西へ向かいます。

龍神信仰の名残が感じられる黒髪山稲荷神社が鎮座していました。

黒髪山という名前から、何やら女性の怨念のようなものが見え隠れしますが、思った通りその類の逸話も残されているようです。

黒髪山稲荷神社

道路沿いに建つ黒髪山稲荷神社。

神社の北方には、奈良時代の女帝である元正天皇、元明天皇の御陵があります。

楠の巨樹!翁舞の奈良豆比古神社
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奈良ドリームランドの近く!古事記に伝わる黒髪の謎

お墓の多いエリアです。

さらに南東方向には、聖武天皇の第一皇子のお墓・那富山墓(なほやまのはか)が眠ります。奈良市街の北の山手に当たるこの地域は華やかな印象とはかけ離れ、時が止まったようにひっそりと静まり返っています。

黒髪山稲荷神社

京都の伏見稲荷大社のように何本も並んだ朱色の鳥居をくぐり抜けて境内に入ります。

小さな境内に、何やら魚のような石造物が見られました。

どうやらここからも、水にまつわる神社であることが伺えます。黒髪山神社の祠の左には白瀧神社が祀られており、白瀧大神の神岩がいくつか見られました。

黒髪山のクロカミは、「クラオカミ」の転じた言葉だとされます。

「闇淤加美(くらおかみ)」とも書き、その別名を高龗神(たかおかみのかみ)と称します。龗(おかみ)とは龍神のことを意味し、「高」は山頂を、「闇(くら)」は谷をそれぞれ意味しています。

恵みの雨を降らし、長雨を止める神様として信仰されてきた龍神ですね。

歴史の道 般若寺

「歴史の道 般若寺」と書かれた石標。

人や車の往来も少ない場所ですが、のんびりとウォーキングを楽しむにはいいかもしれません。

奈保町

奈良豆比古神社から黒髪山稲荷神社へ向う途中、電柱に「奈保町」と書かれた標識を見つけました。

聖武天皇の子供のお墓を「那富山墓(なほやまのはか)」と言いますが、どうやら那富山(なほやま)は奈保山と同じことを意味しているんでしょうね。

黒髪橋

黒髪橋を渡って、いよいよ黒髪山稲荷神社へアクセスします。

既に閉園してしまいましたが、奈良ドリームランドにも近い場所だけにより一層の寂寥感が募ります。往時の賑やかさが嘘のように、ドリームランド周辺も静けさを取り戻しています。

万葉集の歌

黒髪山稲荷神社の鳥居の左手に、万葉集の歌が記されていました。

「ぬばたまの 黒髪山の 山菅に 小雨降りしき しくしく思ほゆ」(万葉集巻11ー2456)

小雨降る黒髪山に、しめやかな心模様が映されています。

飛鳥を散策していて見つけたことがありますが、「ぬばたまの」は「黒」や「夜」に掛かる枕詞ですよね。この他にも、黒髪山を歌った詠み人知らずの歌が万葉集巻7-1241に残されています。

「ぬばたまの 黒髪山を 朝越えて 山下露に 濡れにけるかも」

黒髪山稲荷神社

奈良の昔話によると、黒髪山神社の祠の周りには、半紙で束ねた長い黒髪が幾つもぶら下げられていたそうです。

もちろん、現在ではそのような光景は見られませんが、想像するだけでも薄気味悪いものがあります。

黒髪の正体は何だったのでしょうか。

その秘密は、昔の戦にあります。兵に髪を掴まれないようにと、あらかじめその黒髪を切ったという話が『古事記』に残されています。その切った黒髪を黒髪山に埋めたというお話・・・真偽のほどは定かではありませんが、この神社の魅力の一端に触れたような気がします。

興福院 元明天皇陵

さらに道は興福院、元明天皇陵へと続いて行きます。

普段の奈良観光では訪れることのない神社だと思われますが、穴場観光スポットとして是非おすすめしたいと思います。

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