古語に「ねぐ(祈ぐ)」という言葉があります。
実はこの「ねぐ」は、現代私たちが使っている「願う」や「労う(ねぎらう)」の語源ともされます。
「ねぐ」には、神様の心を和らげる意味合いがあります。
神様に願いを届ける前に、まずはその御心を解きほぐすというわけですね。
古代人たちが神様に対し、畏怖の念を抱いていたことが想像されます。神に奉納する舞楽なども、神様にお喜び頂くものです。何を置いてもまずは神様の御心を和らげる必要があったのです。
禰宜は「ねぐ」の連用形名詞
宮司に次ぐ神職である禰宜(ねぎ)。
宮司・神主に次ぎ、祝(はふり)の上に位する神官のことですが、この禰宜も「ねぐ」に由来しています。
神に祈り、祈願するという意味の「ねぐ」。
神をいたわり、ねぎらうことは願掛けの初段階に為すべきことでした。
天(あめ)にます 岩戸の神を ねがぬ日ぞなき
一生懸命に頑張っている人を見て、私たちはよくねぎらいの言葉を掛けます。
ねぎらうことで特に何かを得ようというわけではありませんが、ごく自然に交わされるコミュニケーションの一つではないでしょうか。
神の御前に立てば、まずは慰労する気持ちが大切です。
祈りを捧げるのはその後ということになります。「ねぐ」という行為は、忘れてはならない大切な所作の一つだと思われます。