鬼の俎・鬼の雪隠古墳から欽明天皇陵へ向かう途中、作者未詳の万葉歌碑が建っていました。
佐檜の隈 檜の隈川の 瀬を早み 君が手取らば 言寄せむかも
言寄す(ことよす)・・・この言葉の意味に迫ってみたいと思います。
飛鳥周遊歩道沿いに建つ万葉歌碑。
檜前(ひのくま)・檜隈(ひのくま)は明日香村の大字として知られます。
檜隈は飛鳥時代には渡来人の居住地でした。
噂を立てる「ことよす」!言寄せ妻
欽明天皇陵は檜隈坂合陵(ひのくまのさかあいのみささぎ)と言いますし、天武・持統天皇陵のことを檜隈大内陵(ひのくまのおおうちのみささぎ)と称します。古代から残された地名として、悠久の飛鳥ロマンを今に伝えています。
飛鳥周遊歩道沿いに鶏頭(ケイトウ)の花が咲いていました。
向こうに見えているのが、明日香村唯一の前方後円墳として知られる欽明天皇陵です。
万葉歌碑の意味が解説されています。
キーワードは「言寄す(ことよす)」という古語でしょうか。
言寄すとは、噂を立てるといった意味合いになります。
自分との仲が噂に立っている女性や、妻だと噂されている女性のことを言寄せ妻(ことよせつま)と言います。今も昔も、男女の仲が噂の種になっていたことが伺えますね。
9月中旬を迎え、キバナコスモスも開花していました。
万葉歌碑の「佐檜の隈」の「佐」が気になりますが、これは語調を整える意味での接頭語「さ」に当たるのではないでしょうか。古語の世界では、名詞や動詞の上に付いてよく用いられます。
万葉歌碑の近くにあった飛鳥周辺地図。
「飛鳥の猿石」で知られる”吉備姫王(きびひめのみこ)檜隈墓(ひのくまのはか)”もすぐ近くですね。
オクラの実と花も見られました。
向こうに見えているのが欽明天皇陵です。
近鉄飛鳥駅前の産直市場でオクラの花が売られているのを見かけましたが、オクラは実のみならず、その花も食用として頂くことができます。オクラ独特の粘り気が感じられ、その食感はクセになりそうです。
黄色い鶏頭(けいとう)も開花していました。
「言寄せむかも」と歌い終わり、その胸に去来するものは何なのでしょうか。
心地良い幸福感なのか、それとも純粋に心配しているのか、作者の思いを推し量りながら、そぞろ歩きの飛鳥散策は続いていきます。