秋から冬にかけて旬を迎える鮗(このしろ)。
出世魚で知られるコノシロは、大きくなる前の段階のコハダが寿司ネタとして有名ですが、コノシロもコハダに負けず劣らず、その白身には濃厚な旨味が感じられます。
昨秋に入荷した新鮮なコノシロ。
体の模様はいかにもコハダを思わせます。
鮗(このしろ)の名前由来!軟条説も有り
昔からコノシロは、祭の時に食べる魚として広く知れ渡っています。
秋といえばお宮参りや七五三のシーズンでもあります。子供の成長を願う行事に、子代(コノシロ)と書く魚が重なります。
えらぶたの近くに大きな黒い斑点が見えます。
腹が白くて背中が銀色をしているコノシロ。背側には小さな黒斑模様が点線上に並びます。その一番前の下方に大きな黒い斑点が確認できます。コノシロならではの特徴ですね。
実はこのコノシロ、焼くと人を焼いたような匂いがするんだそうです。
その昔、娘の嫁入りを先方に諦めさせるために、棺の中にコノシロを入れて焼き、娘は亡くなったと偽ったそうです。子の代わりになった魚を子代(このしろ)と呼ぶようになったという逸話が残されています。
子を思う親の気持ちは今も昔も変わらないのでしょうか、子供の幸せを願ってこの魚を使ったわけですね。
コノシロの唐揚げ。
コノシロを食べる際に小骨が気になる方も多いため、この後南蛮漬けにしてお出ししました。酢に浸すことにより、小骨も柔らかくなって食べやすくなります。コノシロの食べ方としては酢締めが一般的ですが、南蛮漬けも理にかなった料理法だと思われます。
コノシロのオリジナリティを表す軟条。
背びれの後ろの端から、糸状に長く伸びる軟条が確認できます。
コノシロの名前の由来については、つい先程、子の身代わりになる子代(このしろ)のお話をしましたが、幾つかの説があって、この長く伸びる軟条を「此の後ろ」となぞらえる考え方もあります。
コノシロの尾びれは黄色みがかっています。
出産時などには子供の健康を願って、コノシロを地中に埋める習慣があったとも伝えられます。
三輪坐恵比須神社のお守り。
えべっさんの鯛を模った「京こま」です。手で回すことのできる独楽が、新たに恵比須神社のお守りとして登場しています。
コノシロの腹。
水洗いの際に、腹の形を確認してみました。
こうやって見ると、まるで木の葉のような体型をしていることが分かります。お腹の部分は大変硬く、鰯を卸すときのように、ごっそりお腹を切り取ってしまった方がいいのではないかと思われます。
コノシロの全身写真。
ニシン目ニシン科に属するコノシロ。
出世魚の名前は、シンコ(新子)~コハダ~ナカズミ~コノシロと変わっていきます。コノシロが一番体が大きいものの、お値段はシンコやコハダに比べれば格安です。
関東地方の代表的なお正月料理に、コハダの粟漬けがあります。
私はまだ一度も味わったことがありませんが、寿司屋の多い江戸近辺ではコハダを使った様々な料理が発展していったのでしょう。