俵屋宗達の「松島図屏風」を題材にした金蒔絵。
荒磯の風景で知られるモチーフですが、輪島塗のお碗にも見られました!
松島蒔絵吸物椀。
木箱の中に眠っていた高価なお椀を久しぶりに取り出してみました。
大阪住吉付近の海岸か?荒磯屏風を写す伝統工芸品
松島と言うからには、日本三景の松島を描いたものかと思いました。
ところが、この蒔絵の題材は大阪住吉付近の海ではないかと言われています。
俵屋宗達の「松島図屏風」は現在日本には無く、米国のフリーア美術館所蔵になっています。その歴史を紐解くと、堺の豪商・谷正安が作成を依頼して、一時は堺の祥雲寺に寄贈されていたようです。明治期後半になって米国に輸出され、現在に至ります。
松島蒔絵椀の蓋。
奈良県のお隣り、大阪は住吉エリアの海岸風景を描きます。
大正楼中庭の石燈籠。
笠の部分に苔が生え、創業時からの歴史を偲ばせます。
別名を「荒磯屏風」と言うぐらい、激しく波打つ様子が描かれているようですが、この松島椀には穏やかな風景が広がります。
船の帆も ”凪” を思わせます。
海に伸びる砂州と、黄金色の松の木。日本人好みの風景ですね。
吸物椀や煮物椀に使われる松島蒔絵。
蛤の潮汁などを張れば、潮の香りが口いっぱいに広がりそうです。
玄関の竹虎の置物。
楠の一木造りがお客様を出迎えます。
竹とくれば虎、縁起物の名コンビですね。
常緑の松は昔から縁起物とされました。
落葉しない松に、永遠の繁栄を願います。神道においても、松は「神様を待つ」に通じ、神性を帯びてきた歴史があります。指先で持てる輪島塗の逸品を手にしながら、伝統の重みを感じた次第です。