秋に旬を迎えるイトヒキアジの幼魚。
秋の宿泊キャンペーンでお泊り頂いたお客様に、イトヒキアジの焼魚をお出ししました。
糸引鯵(いとひきあじ)。
名は体を表すと申しますか、見た目そのままのネーミングが印象的なイトヒキアジ。スズキ目アジ科に属する魚で、ヒレから伸びる長いトゲは幼魚にのみ見られる特徴です。
イトヒキアジの長く伸びる軟条!その理由は擬態か?
値段も大変お手頃な魚で、仕入れ値は1尾300円ほどでした。
イトヒキアジの塩焼き。
宮崎県日向産の「へべす」を添えてお出しします。
イトヒキアジの尻鰭。
背びれと尻びれが長いわけですが、これはヒレの柔らかいトゲ(軟条)が長く伸びたもの。
なぜこのように長く伸びてしまったのか?その理由には諸説あって、その中の一つに海中でゆらゆら揺れるクラゲを真似ることによって外敵から身を守るためとも言われています。いわゆる擬態ですね。
糸を引く鰺。
とても珍しいものを見せて頂きました。長い糸で連想するのが、三輪山神話にも語られる「最後に三巻き残ったとされる三輪の地名由来」のこと・・・縁結びの赤い糸にもつながり、恋人の聖地・三輪山麓を後押しします。
イトヒキアジの背鰭。
尻びれと同じく、頭部に一番近いひれの部分から伸びているのが分かります。
運命の赤い糸ではありませんが、誰かとつながっていたいから伸びたのかもしれません。不思議なことに、成魚になると長いひれは短くなります。大人になれば必要ないけれども、子供の時には必要な長いひれ。幼魚の時代に、仲間同士を確認し合うために長く伸びたのではないかとも言われています。
柑橘類のへべすの名前の由来が、購入した直売所の冊子に記されていました。
へべすの名前は江戸時代末期、日向・富高村西川内の長曽我部平兵衛さんの庭先で栽培されたことに因むようです。平兵衛さんの酢、ということで「へべす」になったいきさつがあります。水分豊富なへべすは焼魚にもよく合います。
俎板の上に置くと、ひし形と言うか、ほぼ正方形に近い形をしています。
体の表面はどこかタチウオにも似ています。和歌山県の串本地方では、イトヒキアジのことをカガミ、あるいはカガミウオと呼んでいます。まるで自分の顔が映る手鏡のような魚は、どこか神秘的で魅力に満ちています。