奈良市東木辻町にある称念寺。
寄棟造の本堂内は浄土宗本堂の典型とされます。堂内前方を外陣とし、内陣中央奥に御本尊の阿弥陀三尊、その両サイド脇陣に円光大師(法然上人)と善導大師を祀ります。境内には無縁塔や松尾芭蕉の句碑もあり、見所満載のお寺でした。
称念寺本堂と無縁塔。
かつての称念寺一帯は遊郭街でした。身寄りの無い遊女たちの無縁墓が寄せ集められています。無縁塔の頂上には、六字名号碑(1614)がそびえていました。
正座する法然上人坐像と念仏を唱える善導大師像
区分けされた本堂内。
中央奥に御本尊を祀り、向かって左側に宗祖・法然上人、右側に高祖・善導大師という並びです。浄土宗本堂におけるスタンダードな形で祀られていました。
法然上人坐像。
結跏趺坐ではなく、正座するスタイルです。法然上人は勅命により、死後に「円光大師(えんこうだいし)」という諡(おくりな)を賜っています。
内陣中央の阿弥陀三尊像。
御本尊の阿弥陀如来の御前に扇が見えます。その手前には水器が供えられ、とても丁寧に荘厳されています。内陣の天井は折り上げられていました。
無縁塔と芭蕉句碑。
1793年(寛政5年)の芭蕉百回忌に建立された句碑には、
菊の香や奈良には古き佛達
と刻まれています。奈良市内最古の芭蕉句碑と伝わります。
称念寺の歴史は、築地乃内(つじのうち)町にあった草庵に始まります。
その後、1168年に重源上人が宋より帰朝して再建したようです。重源上人と言えば、東大寺再興の祖でもありますよね。
一心山(いっしんざん)。
称念寺の山号です。
今の本堂は江戸時代の建築です。
芳徳寺本堂や春日大社絵馬板と共に、奈良市指定文化財にもなっているようです。
称念寺の愛染堂。
本堂左手前にありました。
本瓦葺の称念寺本堂。
桁行13.54m、梁間12.74mを測ります。
上向き加減の善導大師像。
阿弥陀三尊の右手脇陣にお立ちになられていました。
口から化仏が出ているかのような表情です。念仏を唱えるお姿なのでしょう。六波羅蜜寺の空也上人像を思わせる格好ですね。
2024年度の1月から2月にかけて催された『路地ぶら ならまち・きたまち』イベント。
2月の奈良町では、称念寺の他にも高林寺、誕生寺、徳融寺、金躰寺、興善寺が特別拝観を実施していました。興善寺で発見された法然上人直筆の文書は必見です!