奈良市川久保町の念声寺(ねんしょうじ)。
吉城川と中御門川に挟まれた三角州エリアに佇むお寺です。奈良女子大学にも近く、奈良のきたまち散策で立ち寄りたい穴場。本堂内拝観は不可ですが、路地ぶらイベントで開放されていました。
念声寺の山門。
浄土宗のお寺で、山号を「光照山(こうしょうざん)」と言います。
本堂安置の阿弥陀三尊の他、伊派石工による船御光地蔵菩薩や由縁斎貞柳の歌塚で知られます。毎年7月23日には地蔵盆が営まれ、本堂内で数珠繰りと紙芝居が楽しめます。
徳川幕府の庇護に伴う阿弥陀信仰
念声寺の歴史は、鎌倉時代末期の地蔵石仏建立に端を発します。
鎌倉・室町時代は地蔵尊を中心とした土着信仰をベースにしていましたが、江戸時代の徳川幕府による浄土宗庇護の元、徐々に阿弥陀仏信仰へと推移していくことになります。
本堂の阿弥陀如来。
脇侍の仏像が前屈みの姿勢です。光背ごと前に傾いており、動的な表現が見事ですね。大原三千院の阿弥陀三尊を思わせます。
本堂内の撮影は許可が下りています。
特に案内はありませんでしたが、おそらく向かって右が観音菩薩で、左が勢至菩薩だと思われます。天井から吊るされた煌びやかな飾りが綺麗ですね。こういうのを瓔珞(ようらく)と言うのでしょうか。
念声寺の開基は英暉上人と伝わります。
武田信玄の子孫を師とし、晩年に入道なさったようです。川久保の地に隠室を構えて『英暉庵』と称しました。時代的には江戸時代の元禄年間に当たります。
前傾姿勢の脇侍。
特別拝観もいいものですね。
大寺院の多い奈良市内にあって、細々と伝承される仏たち。改めて奥の深さを感じた一日でした。